第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
2人のシーカー、クラムとリンチがチェイサーたちの真ん中を割って一直線をダイビングしていたのだ。
その速さには本当に息を飲んでしまうばかり。
「地面に衝突するわ!」
ハーマイオニーが悲鳴を上げた時だった。
クラムは最後の1秒で辛うじてグイッと箒を引き上げて、クルクルも螺旋を描いて飛び去ったのだ。
だがリンチは鈍い音を立てながは地面に衝突した。
「バカモノ!クラムはフェイントをかけたのに!」
アーサーおじさんが呻き、私は両手で顔を覆ってから息を飲んだ。
「だ、大丈夫なのかしら……」
「タイムです!エイダン・リンチの様子を見るため、専門の魔法医者さな駆けつけています!」
「大丈夫だよ。衝突しただけだから!」
真っ青になっている私とジニーにチャーリーが慰めるように言った。
「もちろん、それがクラムの狙いだけど……」
「な、なかなか酷いことをするのね……クラムって」
「危険技だよ、あれは」
私の言葉にチャーリーがそう言った。
万眼鏡でクラムを見れば、リンチの遥か上空を輪を描いて飛んでいる。
一方リンチは魔法医に何杯も魔法薬を飲まされていて、蘇生しつつあった。
魔法薬があれば大丈夫だろう。
そう思いながら、クラムへと視線を向ければ隅々とグラウンドを見ている。
恐らくスニッチを探しているのだろう。
「あ、リンチが立ち上がったわ!」
万眼鏡でリンチの様子を見れば、彼は立ち上がっていた。
その瞬間、緑を纏ったサポーターは歓声をあげて、リンチは箒に飛び乗ると上空へと上がる。
「良かった……平気なのね」
「魔法薬を飲んだからね、鼻が折れていたとしても平気だよ」
「にしても、クラムって本当に危険ね……」
あんな技を仕掛けるなんて。
そう思いながら万眼鏡でグラウンドを見た。
モスタファーがホイッスルを鳴らし、チェイサーが今までよりも遥かに凄い動きを見せた。
それから15分後。
試合はますます速く、激しい展開を見せた。
アイルランドは10回のゴールを決めて、130対10という点数差になっている。
マレットがクアッフルをしっかり抱え、ゴール目掛けて突進するもブルガリアのキーパー、ゾグラフが飛び出して彼女を迎え撃つ。
その時、何が起きたかさっぱり分からなかった。
アイルランドからは怒号が飛び交い、直ぐに反則技があったのだと理解した。