第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
「試あぁぁぁぁぁぁぁい、開始!」
バクマンが叫んだ瞬間、競技場は歓声に包まれた。
「そしてあ!はマレット!トロイ!モラン!ディミトロフ!またマレット!トロイ!レブスキー!モラン!」
初めて見るようなクィディッチの試合だった。
選手の動きが信じられないほどに速くて、チェイサーがクアッフルを投げ合うスピードは見たことがない。
追いつけないスピードを万眼鏡で何とかスローモションにしたりとして見ていく。
その時だった。
「トロイ、先取点!」
バグマンの声が響き渡り、スタジアムは拍手と歓声で揺れている。
「10対0、アイルランドのリード!」
「え!?見えなかったわ!」
「えっ?だって、レブスキーがクアッフルを取ったのに!」
「ハリー、アリアネ、普通のスピードで観戦しないと、試合を見逃すわよ!」
ハーマイオニーの叫び声に頷きながら、万眼鏡で試合を見つめる。
さっきは速すぎて何が何だか分からなかったけれど、次は見逃さないと決めた。
ふと、サイドラインの外側で試合を見ているレプラコーンが目に入った。
レプラコーンはまたもや空中に舞い上がり、輝く巨大なシャムロックを形作っている。
それをヴィーラが不機嫌そうに見ていた。
(不機嫌そうね……)
そう思っていれば、試合が再開された。
「トロイ、マレット、モラン!」
最初の10分で、アイルランドは2回得点し、30対0という点差を広げていた。
試合運びはますます速くなり、同時に荒っぽくなった。
ブルガリアのビーター、ボルコフとボルチャノフはアイルランドのチェイサーに向かって思いっきりブラッジャーを叩きつけて、3人の得意技を封じ始めたのだ。
チェイサーの結束が2度も崩され、バラバラになる。
ついにイワノバが敵陣を突破して、キーパーのライアンもかわして初ゴールを決めた。
「凄い!」
「皆、耳に指で栓をして!」
アーサーおじさんの叫びに何事かと思えば、ヴィーラが祝いの踊りを始めていたのだ。
慌てて耳を指で栓をして、数秒待っていればヴィーラは踊るのを辞めていた。
そしてクアッフルはブルガリアが持っていた。
「ディミトロフ!レブスキー!ディミトロフ!イワノバ!うおっ、これは!」
バグマンが唸り声を上げ、私たちは息を飲んだ。