第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
しばらくの間、ヴィーラの退場へのブーイングが止まなかった。
ちらりとロンの方を見れば、彼は何故か自分の帽子のシャムロックをむしっている。
それを見たアーサーおじさんが苦笑をして、ロンから帽子をひったくった。
「きっとこの帽子が必要になるよ。アイルランド側のショーが終わったらね」
「はぁー?」
ロンは口を開けてヴィーラに見入っていて、アーサーおじさんの話をちゃんと聞いてるのかも怪しい。
ヴィーラは片側に整列していたけれど、並んでいる姿も美しい。
ヴィーラの美しさに見惚れているハリーとロンを見て、ハーマイオニーは大きく舌打ちをした。
「まったく、もう!」
怒りながらもハリーに手を伸ばして席に引き戻す。
「さて、次は……。どうぞ、杖を高く掲げてください……アイルランド・ナショナルチームのマスコットに向かって!」
次の瞬間だった。
大きな緑と金色の彗星のようなものが、競技場に音を立てて飛び込んできたのである。
上空を1周し、そこから2つに分かれて、小さくなった彗星がそれぞれの両端のゴールポストに向かって飛んだ。
突然、2つの光の玉を結んで競技場に跨る虹の橋がかかった。
その光景に、観衆は叫び声をあげながら歓声を上げている。
虹が薄れると、次は2つの光の玉は再び合体し1つになった。
今度は輝く巨大なシャムロック、三つ葉のクローバーの形を作り、空高く昇った。
スタンド上空にそれは広がったと思えば、そこから金色のものが降り始めた。
「すごい!」
「これ、金貨……!?」
降ってきたのは金貨の大雨。
金貨は私の肩や頭をぶつかっては、跳ねていく。
上を見上げれば、シャムロックの正体が分かった。
顎髭を生やした、何千という小さな男たちであり、赤いチョッキを着て、手に金色か緑色の豆ランプを持っている。
「レプラコーンだ!」
アーサーおじさんがそう叫び、私はもう一度空を見上げてから目を細めた。
金貨の雨がかなり眩しい。
「ほーら」
するとロンは金貨をひとつまみしてから、ハリーにそれを押し付けていた。
「万眼鏡の分だよ!これで君、僕にクリスマス・プレゼントを買わないといけないぞ、やーい!」
「そんなにハリーからクリスマス・プレゼントほしいのかしら……」
「クリスマス・プレゼントが無いのは寂しいんでしょう」