第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
だが、ルシウスも流石に魔法大臣の前ではマグルについての事は何も言えない様子。
そしてアーサーおじさんに蔑むような会釈をすると、自分の席へと向かって歩いていく。
マルフォイは私たちを小馬鹿にするような視線を投げてから、ルシウスとマルフォイ夫人に挟まれて行った。
「むかつくやつだ」
「相変わらず嫌な奴らよ」
ロンと共に声を押し殺してから話していらば、バクマンが貴賓席に勢いよく飛び込んできた。
「みなさん、よろしいかな?」
先程会った時より、かなり興奮している様子だ。
「君さえよければ、ルード、いつでもいい」
魔法大臣の言葉を聞いたバクマンは、杖を取りだすと自分の喉に当てて『ソノーラス(響け)!』と呪文を唱えた。
そして満席のスタジアムに向かって呼びかけると、大観衆の上に響き渡り、スタジアムの隅々に響いた。
「レディース・アンド・ジェントルメン……ようこそ!代422回、クィディッチ・ワールドカップ決勝戦に、ようこそ!」
バクマンの言葉に、観衆が叫び、拍手をする。
何千という国旗が振られていて、お互いにハモらない両国の国歌が聞こえてきた。
すると貴賓席の正面にある巨大黒板が最後の広告を消して、『ブルガリア0 アイルランド0』という文字を浮かび上がらせた。
「さて、前置きはこれくらいにして、早速ご紹介しましょう……ブルガリア・ナショナルチームのマスコット!」
真紅に染められたスタンドの上手から、歓声が上がった。
「いったい何を連れてきたのかな?」
アーサーおじさんが興味津々と席から身を乗り出した。そして次の瞬間叫んだ。
「あーっ!ヴィーラだ!」
「なんですから、ヴィー?」
「ヴィーラよ、ヴィーラ!」
初めて見たヴィーラは、この世のものとは思えないぐらいの美しさだった。
人間の女性のような姿だけれど、そうじゃないのだ。
「初めて見るわ……綺麗……」
同じ女でも見惚れてしまいそうだ。
そんな時だった。
「ハリー、あなたいったい何してるの?」
ハーマイオニーの声で気がついたが、ハリーは椅子から立ち上がって片足をボックス席の前の壁にかけていた。
そしてロンをみれば、まさに飛び込み台から飛び込むような姿をしている。
「ロン、貴方も何しているの?」
ヴィーラが踊りを辞めると、スタジアム中に怒号が響いていた。
ヴィーラの退場を望まないらしい。