第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
その時、ふと視線を感じると思えばパーシーが羨ましそうに私たちを見ていた。
そんな目で見られても困ると思っていれば、魔法大臣は私たちと握手をしてから、『元気かね?』と声をかけてから、自分の両脇に居る魔法使いにハリーを紹介した。
「ご存知のハリー・ポッターとアリアネ・イリアス・フリートですよ」
ブルガリアの大臣らしき人に、魔法大臣は説明するけれど一言も伝わっていないらしい。
「ハリー・ポッターとアリアネ・イリアス・フリートですぞ……ほら、ほら、ご存知でしょうが。誰だか……『例のあの人』から生き残った男の子ですよ。フリート家はブルガリアでも有名でしょう。まさか、知ってるでしょうね──」
魔法大臣は眉間に皺を寄せながら説明したが、やっぱり一言も伝わっていない様子。
だけど、ブルガリアの大臣は突然ハリーの額の傷跡に気がついたようで、それを指さしてから興奮したように何かをわめき出した。
「なかなか通じないものだ。私はどうも言葉は苦手だ。こういうことになると、バーティ・クラウチが必要だ。ああ、クラウチのしもべ妖精が席を取っているな……いや、なかなかやるものだわい。ブルガリアの連中が寄ってたかって、よい席を全部せしめようとしているし……ああ、ルシウスのご到着だ!」
その言葉に、私とハリー、ハーマイオニーとロンはいっせいに振り向いた。
後列のちょうどアーサーおじさんの真後ろが3席空いていて、そこに向かって席伝いに歩いてくるのはルシウス・マルフォイとその息子、そして女性が1人。
「……あの女性、もしかしてマルフォイの母親かしら」
「たぶんそうだね」
コソコソとハリーと話しながら、私はルシウスとドラコ・マルフォイを睨む。
そして母親へと視線を向ければ、彼女はブロンドの髪の毛に背が高くてほっそりとしている美人だった。
だけど残念な事に『なんていやな臭いでしょう』と言わんばかりの表情をしているから美人な顔が崩れている。
「ああ、ファッジ」
ルシウスは魔法大臣のところまでいくと、手を差し出してから挨拶を交わす。
「お元気ですかな?妻のナルシッサとははじめてでしたな?息子のドラコもまだでしたか?」
「これは、これは、お初にお目にかかります」
魔法大臣は笑顔を浮かべると、ルシウス・マルフォイの妻にお辞儀をしていた。