第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
ということは、ウィンキーのご主人様はウィンキーが高いところが苦手なのを知っていて席を取らせたということ。
嫌な感じと思いながらウィンキーを見れば、彼女は未だに不安そうに瞳を揺らしている。
「ウィンキーは、ハリー・ポッターさま、アリアネ・イリアス・フリートさま、ご主人さまのテントにお戻りになりたいのでございます。でも、ウィンキーは言いつけられたことをするのでございます。ウィンキーはよい屋敷しもべでございますから」
ウィンキーはそう言うと、ボックス席を怖々と見てから戻って行った。
私とハリーはヤレヤレと言わんばかりに肩を竦めてから、ロンたちの方に向き直る。
「あれが屋敷しもべ妖精なのか?へんてこりんなんだね」
「ドビーはもっとへんてこだったよ」
「そうね、へんてこだったわね。……まあ、元気そうにしているなら良かったけど」
「そうだね」
そんな話をしていれば、ロンはさっきハリーに買ってもらった万眼鏡を取り出してから向かいの観客席にいる観衆を見下ろして、万眼鏡を試していた。
「スッゲェ!」
ロンは『再生つまみ』をいじりながら、楽しそうに声を上げる。
「あそこにいるおっさん、何回でも鼻をほじるぜ……ほら、また……ほら、また……」
「そんなもの見ないのよ、ロン」
「いてっ」
私がロンの頭を叩いていれば、ハーマイオニーはビロードの表紙に房飾りのついたプログラムを熱心に見ていた。
「試合に先立ち、チームのマスコットによるマスゲームがあります」
「ああ、それはいうも見応えがあるよ。ナショナルチームが自分の国から何か生き物を連れてきてね、ちょっとしたショーをやるんだよ」
それから30分の間、貴賓席は徐々に埋まってきていた。
アーサーおじさんは続けざまにやって来る魔法使いに握手をしていたので、重要な魔法使いなのだろう。
パーシーは貴賓席に来る魔法使いを見る度に、椅子から飛び上がっては直立不動な姿勢をとるので、双子達がケラケラと笑っていた。
数分後。
貴賓席に魔法大臣であるコーネリウス・ファッジがやってきた。
パーシーは魔法大臣を見ると、飛び上がってから深々と頭を下げたので眼鏡が落ちて割れた。
「やあ、ハリー、アリアネ」
「お久しぶりです、魔法大臣」
「お久しぶりです」
魔法大臣は昔からの親友のように、私とハリーに親しげに挨拶をした。