第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
そういえば……と思い出した。
屋敷しもべ妖精は働くことが務めであるということを、誰かが言っていた。
それなのにドビーは勤め口が見つかっていないということ。
ウィンキーはそれに嘆いているのだろう。
「どうしてなの?」
「仕事にお手当てをいただこうとしているのでございます」
「お手当て?」
つまり、お給料だ。
ドビーはお給料を貰おうとしているということだ。
「だって、なぜ給料をもらっちゃいけないの?」
ウィンキーはそんなことを考えるだけでも恐ろしいと言わんばかりの顔をすると、手で顔を覆った。
「屋敷しもべ妖精はね、ハリー。普通はお給料を貰わないのよ」
「そうなの?」
「お嬢様の仰る通りです!屋敷しもべはお手当てなどいただかないのでございます!」
「だけどドビーはお給料を貰おうとしているのよね?別に良いと思うんだけどね、私は」
「ダメ、ダメ、ダメ。あたしはドビーにおっしゃいました。ドビー、どこかよいご家庭を探して、落ち着きなさいって、そうおっしゃいました。旦那様、お嬢様、ドビーはのぼせて、思い上がっているのでございます、ら屋敷しもべ妖精に相応しくないのでごさいます」
ウィンキーは首を横に振りながら、甲高く泣きそうな声で喋り始めた。
「ドビー、あなたがそんなに浮かれていらっしゃったら、しまいには、ただの小鬼みたいに『魔法生物規制管理部』に引っ張られることになっても知らないからって、あたし、そうおっしゃったのでございます」
「でも、ドビーは、もう、少しぐらい楽しい思いしてもいいんじゃないかな」
「私もそう思うわね」
「屋敷しもべは、言いつけられたことをするのでございます。あたしは、ハリー・ポッターさま、アリアネ・イリアス・フリートさま、高いところがまったくお好きではないのでございますが……」
ウィンキーは震えながらそう呟く。
そしてちらりボックス席の前端を見てから生唾を飲んでいた。
「でも、ご主人様がこの貴賓席に行けとおっしゃいましたので、あたしはいらっしゃいましたのでございます」
「君が高いところが好きじゃないと知ってるのに、どうしてご主人様は君をここによこしたの?」
「ご主人さまは、ご主人さまは自分の席をあたしに取らせたのです。ハリー・ポッターさま、ご主人さまはとてもお忙しいのでございます」