第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
後ろの列の、奥から2番目の席に小さな生き物が座っているのが見えた。
短すぎる脚を椅子の前方に突き出し、キッチン・タオルをトーガ風に被っていて、顔を両手で覆っているが特徴的な耳に見覚えがある。
「「ドビー?」」
私とハリーは声を重ねながら、その生き物に呼び掛けた。
すると小さな生き物は顔を上げて、指を開いた。
「あ……」
ドビーじゃなかった。
とてつもなく大きな茶色の瞳、それはドビーのものじゃなかった。
だけど直ぐに屋敷しもべ妖精だということは気づいた。
「旦那様とお嬢様はあたしの事、ドビーとお呼びになりましたか?」
しもべ妖精は怪訝そうに、甲高い声で私たちに尋ねてくる。
恐らくこの子は女の子だとすぐに話し方で気がついていると、ハーマイオニーとロンが振り返ってよく見ようとしていた。
私とハリーからドビーの話は聞いているが、会ったことはないので興味があるみたい。
アーサーおじさんさえも興味を持って振り返っている。
「ごめんね。僕たちの知ってる人じゃないかと思って」
「急に呼びかけてごめんなさいね」
「でも、旦那様、お嬢様。あたしもドビーをご存知です!」
甲高い声でそう喋りながら、彼女は何故か眩しそうに顔を覆っている。
「あたしはウィンキーでございます。旦那様、お嬢様。貴方様達は、貴方様達は、紛れもなくハリー・ポッターさまとアリアネ・イリアス・フリートさま!」
「うん、そうだよ」
「ええ、そうよ」
何で私とハリーの名前を知っているのだろうか。
そう思っていれば、すぐにその謎は解けた。
「ドビーが、あなた様達の事をいつもお噂してます!」
「そうだったのね」
「ドビーはどうしてる?自由になって元気にやってる?」
「あれから私たち会ってないから、元気にやってるか気になるのよ」
ウィンキーは首を振る。
「ああ、旦那様、お嬢様。ああ、それでございます。決して失礼を申し上げるつもりはございませんが、貴方様達がドビーを自由になさったのは、ドビーの為になったのかどつか、あたしは自信をお持ちになるません」
「どうして?ドビーに何かあったの?」
「ドビーは自由で頭がおかしくなったのでございます。旦那様、お嬢様」
「頭がおかしくなった…?」
「身分不相応の高望みでございます、旦那様、お嬢様。勤め口が見つからないのでございます」