第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
クラウチの声は何処か苛立っている。
どうしたのだろうかと思いながら、聞き耳を立てていればクラウチはため息を吐き出しながら語った。
「ずいぶんあちこち君を探したのだ。ブルガリア側が、貴賓席にあと12席設けろと強く要求しているのだ」
「ああ、そういうことを言ってたのか。私はまた、あいつが毛抜きを貸してくれと頼んでいるのかと思った。訛りがきつくて」
ブルガリアの人とは話したことは無いけれど、どんな風に訛りがキツイんだろう。
そう思っていれば、パーシーがずいっと体を前に出してクラウチに声をかけた。
「クラウチさん!」
首だけ上げてお辞儀したパーシーは、酷く猫背に見えた。
「よろしければお茶はいかがですか?」
「ああ」
クラウチが少し驚いた表情を浮かべてパーシーを見る。
「いただこう。ありがとう、ウェーザビー君」
双子が飲みかけていたお茶にむせて、咳き込んでいて、パーシーは耳を真っ赤に染めていた。
そして慌ててヤカンを準備を始める様子を見ながら、本当にパーシーはクラウチにお熱なんだなと分かる。
「ああ、それにアーサー、君とも話したかった」
「なんだい?」
「アリ・バシールが襲撃してくるぞ。空飛ぶ絨毯の輸入禁止について君と話したいそうだ」
アーサーおじさんが深いため息を吐き出した。
「その事については先週ふくろう便を送ったばかりだ。何百回言われても答えは同じだよ。絨毯は『魔法をかけてはいけない物品登録簿』に載っていて、『マグルの製品』だと定義されている。しかし、言ってわかる相手かね?」
「だめだろう」
クラウチはパーシーからカップを受け取ると、口に少し含んでから答えた。
「わが国に輸出したくて必死だから」
「まあ、イギリスでは箒に取って代わることはあるまい?」
「アリは家族用乗り物として市場に入り込める余地があるも考えている。私の祖父が、12人乗りのアクスミンスター織の絨毯を持っていた。しかし、もちろん絨毯が禁止になる前だがね」
その言葉はまるで、クラウチの先祖が皆厳格に法を遵守した事に毛ほども疑いを持たれたくない。
そんな感じの言い方である。
(厳格な人なんだろうな、この人……)
お茶を飲みながら、クラウチの性格が分かって気がした。
「ところで、バーティ、忙しくしてるかね」
バグマンが呑気にそう話し出した。