第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
「もう子供じゃないんだ。自分たちのやりたいことはわかってるさ!アイルランドが勝つが、クラムがスニッチを捕るって?そりゃありえないな、お2人さん、そりゃないよ……2人にすばらしい倍率をやろう……その上、おかしな杖に5ガリオンつけよう。それじゃ……」
バグマンは素早くノートと羽根ペンを取り出すと、双子の名前を書き付ける。
その様子をアーサーおじさんは『やれやれ』と言わんばかりの表情を浮かべ見ていた。
「サンキュ」
バクマンがよこした羊皮紙メモを受け取ったジョージは、それをローブの内ポケットに収める。
一方、上機嫌なバクマンはアーサーおじさんの方に向き直った。
「お茶がまだだったな?バーティ・クラウチをずっと探しているんだが。ブルガリア側の責任者がゴネていて、俺には一言もも分からん。バーティなら何とかしてくれるだろう。かれこれ150ヶ国語が話せるし」
「クラウチさんですか?あの方は200ヶ国語以上話します!水中人のマーミッシュ語、小鬼のゴブルディグック語、トロールの……」
パーシーが興奮したように話し出すと、フレッドがバカバカしいと言わんばかりに言った。
「トロール語なんて誰だって話せるよ。指さしてブーブー言えばいいんだから」
パーシーは馬鹿にされた事に腹を立てたのか、嫌そうな顔をすると乱暴に焚き火を掻き回した。
「バーサ・ジョーキンズのことは、何か消息があったかね、ルード」
「なしのつぶてだ」
バクマンは草むらに座り込みながら、気楽に言った。
「だが、そのうち現れるさ。あのしょうのないバーサのことだ……漏れ鍋みたいな記憶力。方向音痴。迷子になったのさ。絶対間違いない。10月ごろになったら、ひょっこり役所に戻ってきて、まだ7月だと思ってるだろうよ」
「そろそろ捜索人を出して探した方がいいんじゃないのか?」
「バーティ・クラウチはそればっかり言ってるなあ。しかし、いまはただの1人も無駄には出来ん。おっ、噂をすればだ!バーティ!」
焚き火の傍で、魔法使いが1人『姿現わし』で現れた。
その姿はバクマンとは対照的で、シャキッと背筋を伸ばして、非の打ち所のない背広とネクタイ姿の初老の魔法使い。
「ちょっと座れよ、バーティ」
バクマンは草むらを叩いて、座るように促すがクラウチは首を横に振った。
「いや、ルード、遠慮する」