第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
魔法使いとはバレていないけれど、怪しまれているというわけだ。
ハラハラしながらアーサーおじさんの様子を見ていれば、ロバーツさんは訝しげにおじさんを見ながら話を続ける。
「お互いに知りあいみてえだし。大掛かりなパーティかなんか」
その時だった。
突然、魔法使いが小屋の戸口の脇に現れたかと思えば、ロバーツさんへと杖を向けて呪文を唱える。
「オブリビエイト(忘れよ)!」
呪文を掛けられた瞬間、ロバーツさんの目は虚ろになった。
まるで夢見るようなトロンとした表情になり、呪文が効いたのだと直ぐに分かる。
「キャンプ場の地図だ」
さっきまでの怪訝そうな態度から一変して、ロバーツさんは穏やかに言った。
「それと、釣りだ」
「どうも、どうも」
アーサーおじさんがお礼を言い歩き出したので、私達も一緒に歩き出した。
あの魔法をかけた魔法使いも一緒に着いてきて、ちらりと見れば無精髭を生やして、目の下には濃い隈が出来ている。
しばらく歩き続けて、ロバーツさんから聞こえない距離になると魔法使いはボソボソと話し出した。
「あの男はなかなか厄介でね。『忘却術』を日に10回もかけないと機嫌が保てないんだ。しかもルード・バクマンがまた困り者で。あちこち飛び回ってはブラッジャーがどうこ、クアッフルがどうのと大声で喋っている。マグル安全対策なんて何処吹く風だ。まったく、これが終わったら、どんなにホッとすふか。それじゃ、アーサー、またな」
魔法使いは疲れきった表情を浮かべながら、『姿くらまし』で消えてしまった。
「バクマンさんて、『魔法ゲーム・スポーツ部』の部長さんでしょ?」
ジニーが驚いた表情で話し始めた。
「マグルのいる所でブラッジャーとか言っちゃいけないぐらい、分かってるはずじゃないの?」
「そのはずだよ」
アーサーおじさんは微笑みながらジニーの頭を撫でると、皆を引き連れてキャンプ場の門をくぐる。
「しかし、ルードは安全対策にはいつも、少し……なんというか……甘いんでね。スポーツ部の部長としちゃ、こんな熱心な部長はいないがね。なにしろ、自分がクィディッチのイギリス代表選手だったし。それに、プロチームのウイムボーン・ワスプスじゃ最高のビーターだったんだ」
「嬉しくて話しちゃうのかもしれないわね。イギリスでワールドカップがあるのが」
「アリアネの言う通りかもしれない」