第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
相手はシリウスだ。
そう思っていれば、ハーマイオニーと目が合った。
何故かジト目で私を見てきていて、首を傾げていれば『やれやれ』と言わんばかりの表情。
「諦めた方がいいわよ、フレッドにジョージ。アリアネは絶対言わないわよ」
「じゃあハーマイオニー、君が教えてくれよ」
「言えないわ」
「何でだよ」
「言ったら大変なことになるもの。色々ね」
意味ありげに言うハーマイオニーに、フレッドとジョージは首を傾げるばかり。
するとハーマイオニーが私に近づいてから、耳元でコソッと話した。
「言わないから安心しなさい。私とアリアネだけの秘密にしてあげる。だから、もし好きになったら言いなさい。恋愛相談ぐらいなら乗ってあげるから」
「……ありがとう」
私はそっぽを向きながらお礼を言い、その後は無言でひたすら歩いた。
ストーツヘッド・ヒルを登り始めると、息切れで話をする所ではなくなってしまった。
ウサギの隠れ穴につまづいたり、草の塊に足を取られたりとして登るのに一苦労。
脚が棒のようになりそう。
そう感じた時にはやっと平らな地面に足が着いた。
「フーッ。やれやれ、丁度いい時間だ。あと10分はある……」
私達は荒い息をしながら、息切れをして疲れきっていた。
「疲れた……」
「こんなに疲れることになるなんて、思ってなかったわ……」
今すぐに座り込みたい。
そう思いながら、辺りを見渡せばまだ暗い。
「さあ、あとは『移動キー』があればいい。そんなに大きいものじゃない……さあ、探して……」
「それっぽいものがあれば、良いのよね……」
バラバラに別れてから、私達は『移動キー』を探し始めた。
しばらくして、大きな声が聞こえてくる。
「ここだ、アーサー!息子や、こっちだ。見つけたぞ!」
丘の向こう側に長身の影が2つ立っている。
誰だろうかと目を細めていれば、アーサーおじさんが嬉しげに手を振った。
「エイモス!」
アーサーおじさんは声の主の方へと歩き出し、私たちも着いていけば、褐色のゴワゴワした顎髭に血色のいい顔の男性がいた。
左手には使い古されたブーツを持っている。
「みんな、エイモス・ディゴリーさんだよ。『魔法生物規制管理部』にお勤めだ。みんな、息子さんのセドリックは知ってるね?」
「セドリック!?」
「やあ、アリアネ、久しぶりだね」