第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
「いや、いや、それは何キロもむこうだ。少し歩くだけだよ。マグルの注意を引かないようにしながら、大勢の魔法使いが集まるのは非常に難しい。私たちは普段でさえ、どうやって移動するかについては細心の注意を払わなければならない。ましてや、クィディッチ・ワールドカップのような一大イベントなおさらだ」
「少し歩くだけね……少し」
その少しはどのくらいなんだろうか。
なんて思いながら、未だに眠たくて重たい瞼を擦る。
すると目が覚めるぐらいの叫び声をモリーおばさんが発した。
「ジョージ!」
「どうしたの?」
モリーおばさんの鋭い叫び声に、全員が飛び上がっていればジョージはしらばっくれるが、モリーおばさんは鋭い目付きをしている。
「ポケットにあるものは何?」
「なんにもないよ!」
「嘘おっしゃい!」
モリーおばさんは杖をジョージのポケットに向けて叫んだ。
「アクシオ(出てこい)!」
すると鮮やかな色の小さなもの達が数個、ジョージのポケットからふわりと飛び出した。
ジョージは慌ててソレを取ろうとしたけれど、モリーおばさんが掴む方が早かった。
「捨てなさいって言ったでしょう!」
「あ、ベロベロ飴(トン・タン・トフィー)じゃない」
モリーおばさんがジョージから取り上げたのは、ハリーの従兄弟の悪戯に使ったベロベロ飴(トン・タン・トフィー)である。
「全部捨てなさいって言ったでしょう!ポケットの中身を全部お出し。さあ、2人とも!」
だが2人とも出そうとはしない。
そんな2人に痺れを切らしたモリーおばさんが、呪文を唱えてから飴を取り上げていく。
飴は思いがけない所からいっぱい出てきた。
ジャケットの裏地やら、ジーンズの折り目やら色んなところから。
「僕たち、それを開発するのに6ヶ月もかかったんだ!」
フレッドが飴を捨てているモリーおばさんへと叫んだが、モリーおばさんは怒りながら叫び返した。
「おや、ご立派な6ヶ月の過ごし方ですこと!『O・W・L試験』の点が低かったのも当然だわね」
そんなこんなで、出発の時は穏やかなものじゃなかった。
飴を奪い取られた双子は怒っていて、モリーおばさんはしかめっ面。
双子はおばさんも口も聞かずに歩き出した。
「それじゃ、楽しんでらっしゃい。お行儀よくするのよ」
おばさんは双子達に声をかけたけれど、双子達が返事をすることはなかった。