第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
ー翌日ー
いよいよ今日、シリウスとバックビークが隠れ家から離れる日となった。
ハリー達は見送りたいと言っていたけれど、シリウスが離れがたくなるからと、ハリー達の提案に首を横に振った。
だから見送りは私とリーマスだけ。
「本当に良かったのかい?ハリー達の見送りを断って」
「ああ。見送られたら離れがたくなってしまうからな」
シリウスはバックビークを撫でながら小さく笑う。
そんなシリウスに私は眉を下げながら、彼と離れる寂しさと心配さが込み上げてくる。
隠れ家と違って、外に出れば危険がある。
吸魂鬼に見つかればシリウスは危険な目に遭うし、魔法省に見つかればアズカバンに連れ戻されるかもしれない。
そんな不安が顔に出ていたのだろう。
「アリアネ、そんな顔をしなくて大丈夫だ」
「シリウス……」
彼の手が伸びて、私の頭を撫でる。
優しい手つきは相変わらずで、私を壊れ物と思っているような優しい撫で方。
「シリウス、約束して」
「え?」
「絶対に無事でいるって。また私やハリー達、リーマスに会うって約束して!」
私はシリウスの腕を掴んで、真っ直ぐに彼の瞳を見つめる。
シリウスの瞳は見開かされていたけれど、直ぐに細められて微笑む。
「……勿論、約束する。無事でいよう、また君やハリー達に会おう」
「約束よ」
「ああ。それじゃあ、そろそろ私は行こう」
シリウスは私とリーマスに背を向けて、バックビークに近づいていく。
だけどその足を突然止めて、こちら側へと振り返る。
「アリアネ。私を救い出してくれただけではなく、私が隠れられるよう隠れ家に匿ってくれてありがとう。私は何度も君に救われている」
「大袈裟よ」
「いや、大袈裟なんかじゃない」
シリウスは私へと手を伸ばしたかと思うと、額にキスを落としてきた。
「え……!?」
「ありがとう、アリアネ」
「シリウス!」
「はは!怖い狼に怒られる前に私は行こう!それじゃあ、2人とも元気でな!」
悪戯っ子のように笑いながら、シリウスは駆けていきバックビークに飛び乗った。
踵でバックビークを小突くと、ふわりとバックビークは羽を広げて飛び上がる。
「また会おう!アリアネ、リーマス!」
飛び立ったシリウスを見送りながら、私は彼にキスを落とされた額に手を当てながら顔を真っ赤に染めていた。