第14章 秘密【アズカバンの囚人】
「お礼なんていいわよ。じゃあ、私はお昼ご飯作ってくるから」
アリアネは小さく笑うと台所へと向かった。
その後ろ姿を見送ったシリウスとリーマスは、お互いの顔を見合わせる。
「そんなに警戒しなくてもいいだろう、リーマス」
「名づけ親としては、危険な狼がいるから警戒してないといけないんだ」
「狼が狼の警戒か……」
喉を鳴らして笑うシリウスをリーマスは睨みながらも、愛しい名づけ子の準備を手伝う為に台所へと向かった。
シリウスはアリアネが料理する姿を見ながら、その姿にヘレンの面影を重ねていた。
(恐ろしい程に似ている……。でも、似ていないとしたら、性格かもしれないな)
性格はどちからと言うと、父親であるウィリアスによく似ている気がする。
あのとき、ピーターを蹴り飛ばした時はウィリアスの面影を見た。
「2人によく似ているな……」
ポツリと呟いたシリウスは目を細め、アリアネの後ろ姿を見つめる。
「触れたい」
小さく呟いてから、足を動かして台所へと向かった。
「私もなにか手伝おう」
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その日の夜。
アリアネは未だに慣れない、隠れ家の寝室でゴロリと寝返りをうちながら魘されていた。
『フリート家は根絶やしにしてやる。よくも俺様の邪魔ばかりしてくれた。根絶やしにして、その血だけを俺様のものにしてやる』
『やめて!娘にだけは手を出さないで!!』
『娘も殺してやる!フリート家の血は俺様のものだ!』
女性の悲鳴、そして誰かの不快な笑い声。
その声を聞いた瞬間、アリアネは目を覚ました。
荒い息をして、寝汗もかいていて、動悸が激しくなっている。
母親の悲鳴だ。
アリアネは直ぐにそう気がついた。
もうひとつの甲高い笑い声は、ヴォルデモートのもの。
気がついた瞬間、アリアネは震えが止まらなくなった。
「母さん……」
酷く喉が渇いている。
アリアネは起き上がると、水を飲みにキッチンへと向かった。
「おや、どうしたんだ?」
キッチンに向かうと、そこにはシリウスがいた。
手にはグラスが握られていて、中身は水が入っている。
どうやらシリウスも水を飲みに来たのだろう。
「水を……飲みに来たの」
「そうなのか。それにしては、顔色が悪い。なにかあったのかい?」