第14章 秘密【アズカバンの囚人】
並べられた料理は湯気を立ち登らせて、食欲を刺激する匂いを漂わせる。
「美味しそうだ」
「美味しいよ、アリアネの料理は」
「シリウス、沢山食べてね。貴方は太らないといけないんだから」
「ああ、沢山食べさせてもらうよ」
シリウスはスプーンを手に取ると、ミネストローネに口をつけた。
「うん、美味いな。料理上手だなアリアネは」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ」
「何時でも嫁入りが出来そうだ」
「嫁入りだって?まだアリアネには早すぎるね」
「そうかい?あと数年もすればアリアネは結婚出来る年になる。どうだい、私の所に来るかい?」
その言葉にアリアネはパンを喉に詰めそうになった。
慌てて水を口に含んでから、飲み込んで、顔を真っ赤に染めてしまう。
「な、なな、何言ってるの!?」
「そうだ、シリウス。君のところに嫁にやるわけないだろう。歳を考えてほしいね、それに君は今脱獄囚だ」
「歳は関係ないだろう?年の差なんて、今どき珍しいものじゃない。それに脱獄囚なのか仕方ない。だが、無実が証明されたら解決だ」
「私が許さない」
「君が許さなくてもアリアネが構わないなら良いだろう?」
「それでも許さない!」
「もう!言い争いしないで食べてよ!!」
騒がしい朝食を終えたアリアネは、シリウスを連れて庭へと出ていた。
森に囲まれた隠れ家は庭も隠れていて、外からは中が見えないのでシリウスが外に出ていても問題ない。
「髪の毛、少し切りましょう。髭も剃る?」
「そうだな、髭は少し残しておこう」
「分かったわ」
アリアネはハサミを取り出すと、シリウスの伸びきった髪の毛を切っていく。
絡まっている所もバッサリと切っていき、肩に着くかつかない長さにした。
「痛くない?」
「ああ。優しい手つきだ、ありがとう」
「それなら良かった」
髪の毛も切り落とし、髭も少し剃ったシリウスは見違えるほどだった。
まだ痩せこけてはいるけれども、お風呂に入ったりしたおかげか、清潔な姿となっている。
その姿は、アリアネが夢や写真で見た彼だった。
少し違うのは瞳だろうか……何故かアリアネを熱っぽく見つめるその瞳だ。
「うん、だいぶ清潔になったじゃないかシリウス」
「アリアネのおかげだ。ありがとう」