第14章 秘密【アズカバンの囚人】
懐かしそうにシリウスは呟く。
「だが、恋から徐々に私は彼女に親愛を持つようになったよ。それからは親友になったよ……こんな話、君に聞かせるつもりはなかったんだがね……」
「ううん。ちょっとお母さんの話を聞けて嬉しかったわ」
「そうかい?何時でも君のご両親の話をしてあげよう。なんから、寝物語としてでもいいよ?」
「寝物語を聞かないと寝れないほど子供じゃないわよ……」
拗ねたように頬を膨らませるアリアネにシリウスは微笑む。
小さく笑いながら、頬を撫でていた手をゆっくりと額へと伸ばすと髪の毛をかき分ける。
そして雪のように白い額に、顔を近づけるとキスを落とした。
すると、アリアネの白い肌は一気に赤く染まる。
「へ……」
「そろそろ寝なさい。明日、起きれなくなってしまうよ」
「そ、そうね!明日起きたら、まず、朝ごはんを作らなきゃ!シリウスは苦手なものとかない?」
「特にない」
「そうなのね!マグル式に作ることになるけど、美味しく作るから!」
「楽しみにしていよう」
「じゃ、じゃあ、おやすみなさい!」
アリアネは顔を真っ赤にしながら、シリウスに挨拶してから応接間を出ていった。
初心な反応を見せた彼女に、クスッと小さく笑ったシリウスは出ていく背中を見送る。
すると、彼女と入れ違うようにリーマスが応接間に入ってくるとシリウスを睨みつける。
「なんだい、ムーニー。そんなに私を睨まないでくれるかい?」
「あの子に何をしたんだい、パッドフット。ずいぶん、顔を真っ赤にさせていたんだけどね」
「おやすみのキスをしただけだ。何か悪いかな?」
悪びれもせずに、シリウスは小さく笑いながら椅子に腰掛けた。
そんな彼を睨むリーマスは、壁に背を預けながら、ため息を小さく吐き出す。
「言っておくけど、私の名づけ子に変なことはしないでおくれ。シリウス」
「変なことはしていない。言っただろう?おやすみのキスをしただけだ」
「……あの子はヘレンじゃない」
リーマスの言葉がやけに響いた。
「アリアネにヘレンを重ねるのはしないでくれよ。君がヘレンに恋心をずっと抱いていたのは私は知っている。だからといって、アリアネにヘレンを重ねて、その手を伸ばそうとはするんじゃないよ」
「……わかっているさ、リーマス」
「頼むよ」