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シリウスに導かれ【ハリーポッター❈救済】

第14章 秘密【アズカバンの囚人】


ーthird person singularー


シリウスがバックビークを連れて、隠れ家を飛び立ってから2日。
深夜の頃、アリアネは慣れない家のせいなのか眠れずに応接間の所でぼう……と座っていた。
リーマスは既に寝室で眠っていて、出てくる気配はない。

「シリウス、いつ帰ってくるのかしら……」

彼女の独り言は応接間に溶けて消える。
するとガチャッという扉が開く音が聞こえて、扉の方へと視線を向ければ、そこにはシリウスが立っていた。

「シリウス!」
「おや、眠っていなかったのかい?もう深夜だぞ」
「……慣れない場所で眠れなかったの」

シリウスは相変わらずの落窪んだ瞳に、やつれた頬をしていた。
やせ細った体は不健康そのものであり、アリアネは直ぐに食べさせて太らせないと、と考える。
そんな考え事をしていた彼女にシリウスは手を伸ばすと、頬を優しく撫でた。

「し、シリウス?」
「君は……本当にヘレンにそっくりだな」
「……そんなに似ているの?周りの人からもよく言われるの」

成長する度に、『ヘレンによく似ている』と言われる回数が増えた。
本人は自覚はないけれど、周りからそう言われる度に『そうなのね』と嬉しくなる。

シリウスは目をゆっくりと細める。
彼女は親友であるヘレンに恐ろしいぐらいに似ていた。
生き写しと言ってもいいぐらいであり、成長した彼女を見た時は驚いたものだ。

「ああ、よく似ている」

シリウスはもう一度、皮と骨と言ってもいいぐらいやせ細った手でアリアネの頬を撫でる。
こそばゆいのか、彼女は目を伏せながらクスクスと笑う。

「君は母親によく似ている……忘れられない、私の初恋相手でもある彼女に……」
「え?」

アリアネのカージナルレッドの瞳が見開く。
そして同時に、シリウスの瞳も見開いたが、直ぐに細められてから小さく笑う。

「いや、実はね、私は君のお母さんに恋したことがあるんだ。恥ずかしいことを言うようだけどね」
「そう、だったのね」

ズキッと心が痛むのをアリアネは感じていた。
その痛みが何かなのかは分からずに、首を傾げそうになる。

「だけど、初恋と同時に私は彼女に憧れていた」
「憧れ?」
「自由に生きて、何のしがらみもない彼女に。彼女は本当に自由に生きる人だったからね。私はそんな彼女に憧れてしまっていた」
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