第14章 秘密【アズカバンの囚人】
その優しさに驚いていれば、シリウスの手が叩かれてしまう。
「なにをするんだ、リーマス」
「それはこっちの台詞だよ。あまり私の名づけ子にそう言った触れ方はしないでくれ、シリウス」
「そう言った触れ方……とは?」
シリウスは目を細めながら、リーマスの事を見る。
だけど私のことを見ていた時と違って、何処か挑発したような様子。
どうしたのだろうと、キョロキョロしていれば、シリウスが私ににっこりと微笑んだ。
「私は少し、バックビークを連れて出かけるよ。ホグワーツから離れた場所で私を目撃させなければいけないからね」
「あ、そうね……。気をつけてね、シリウス」
「ああ。ありがとう、アリアネ」
シリウスはそう言うと玄関の方に向かう。
追いかけてみれば、近くの森の茂みにはバックビークがいた。
「アリアネ、荷物はどうするんだい?」
「あ、部屋を決めなきゃいけないわね」
隠れ家にはキープ魔法がかけられていて、部屋自体はほこりを被ってなくて綺麗だ。
部屋も綺麗であり、家具も備え付けられていて、隠れ家と言うか別荘に近い。
両親が祖父母に受け継いだものらしく、場所はリーマスとモリーおばさん達が知っていて私に教えてくれた。
鍵はグリンゴッツに保管されていたのを、私が受け継いだのである。
「アリアネ、1つ忠告をしよう」
「なあに?リーマス」
「君はこれから、私とシリウスと生活する。だが警戒するんだよ。シリウスを」
「何でシリウスを?」
「1つ言っておこう。男は皆、狼だ」
その言葉に私はキョトンとした。
「狼?」
そういえば、モリーおばさんも同じことを言っていた。
『男は皆狼だから、気をつけるのよ』と、ジニーと共に言われた記憶がある。
その意味は私もちゃんとわかっているけれど……。
「シリウスが私に何かするとは思わないわ。だって私、まだ13歳の小娘よ?シリウスとは20歳も離れてる」
「歳は関係ないんだよ。とにかく、気をつけることだ。いいね?」
「わ、分かったわ……」
リーマスの圧に、私は頷いてしまった。
でもシリウスが私に何かするようには思えない。
(だけど、シリウスと会ってから不思議なのよね)
胸が熱くなるような、そんな感覚に襲われる。
(これはなんだろう……)
心で独りごちりながは、私は胸元を抑えるのだった。