第14章 秘密【アズカバンの囚人】
リーマスは机に覆い被さるようにしてから、あるものを見ていた。
何を見ているのだろうかと、机をのぞけば、そこには『忍びの地図』が広げられている。
そしてハリーがこの部屋に来ていることが記されていて、コンコンとノックが聞こえた。
「君がやってくるのが見えたよ」
「ハリー……」
「アリアネ、ここにいたんだね……」
ハリーは眉を下げながら、リーマスを見た。
「今、ハグリッドに会いました。先生がお辞めになったって言ってました。嘘でしょう?」
「いや、本当だ」
「どうしてなんですか?魔法省は、まさか先生がシリウスの手引きをしたなんて思っているわけじゃありませんよね?」
「いいや」
リーマスはドアのところまで行くと、バタンと扉を閉めた。
「私が君たちの命を救おうとしていたのだと、ダンブルドア先生がファッジを納得させてくださった。せぶあはそれめプッツンとキレた。マーリン勲章を貰い損ねたのが痛手だったのだろう。そこで、セブルスさ、その、ついうっかり、今日の朝食の席で、私が狼人間だと漏らしてしまった」
「うっかりなんかじゃないわ!わざとよ、それは!」
「そうですよ!それに、たったそれだけでお辞めになるなんて!」
私たちの言葉を聞いたリーマスは、自嘲的な笑いを零していた。
「明日の今頃には、親たちのふくろう便が届きはじめるだろう。ハリー、アリアネ、誰も自分の子供が、狼人間に教えを受けることなんて望まないんだよ。それに、昨夜のことがあって、私も、そのとおりだと思う。誰か君たちを噛んでいたかもしれないんだ。……こんなことは二度と起こってはならない」
「そんなことないわ……!リーマスは素晴らしい教師よ。狼人間だとしても……貴方が教師を辞めることを望んでいない人はいるわ」
「そうです!先生は、今までの最高の『闇の魔術に対する防衛術』の先生です!行かないでください!」
リーマスは返事をせずに、軽く首を横に振るだけ。
そして引き出しの中を片付け始めだすので、私は唇を噛み締めた。
「そうだ。校長先生が今朝、私に話してくれた。ハリー、君は昨夜、すいぶん多くの命を救ったそうだね。私に誇れることがあるとすれば、それは、君が、それほど多くを学んでくれたということだ。君の守護霊のことを話しておくれ」