第14章 秘密【アズカバンの囚人】
「ほーれ、セブルス、聞いての通りじゃ。ハリーもアリアネもハーマイオニーも同時に2ヶ所に存在することが出来るというのなら別じゃが。これ以上3人を煩わすのは、なんの意味もないと思うがの」
セブは未だに怒りを顕にしながら、その場に棒立ちになっていた。
そして魔法大臣を睨みつけて、ダンブルドアを睨みつけてから、ローブを翻してから病室を嵐のように立ち去っていった。
「あの男、どうも精神不安定じゃないかね」
立ち去ったセブを見ながら、魔法大臣はショックを受けた様子で呟いた。
「私が君の立場なら、ダンブルドア、目を離さないようにするがね」
「いや、不安定なのではない。ただ、酷く失望して、打ちのめされておるだけじゃ」
「それは、あの男だけではないわ!」
魔法大臣は声を荒らげながら、顔を両手で覆った。
「『日刊預言者新聞』はお祭り騒ぎだろうよ!我が省はブラックを追い詰めたが、やつはまたとしても、我が指の間からこぼれ落ちていきおった!あとはヒッポグリフの逃亡の話が漏れれば、ネタは充分だ。私は物笑いの種になる!さてと……もう行かなければ。省のほうに知らせないと……」
魔法大臣はぐったりと疲れた様子を見せる。
シリウスを取り逃したことや、バックビークの件が漏れたらそれは大変なことになるだろう。
少し同情しながらも、私はチョコレートをモゴモゴと頬張る。
「それで、吸魂鬼は?学校から引き揚げてくれるのじゃろうな?」
「ああ、そのとおり。連中は出ていかねばならん。罪もない子供に『キス』を執行しようとするとは、夢にも思わなかった……まったく手に負えん……まったくいかん。今夜にもさっさとアズカバンに送り返すよう指示しよう。ドラゴンに校門を護らせることを考えてはどうだろうね……」
「ハグリッドが喜ぶことじゃろう」
ダンブルドアは笑いながら、魔法大臣は落ち込みながら2人揃って医務室から出た。
するとマダム・ポンフリーは直ぐさま、扉の方に飛んでいって鍵をかけてしまう。
「まったく……!」
マダム・ポンフリーは怒りながらも、私たちにチョコレートを渡していた。
その時、病室の端から呻き声が聞こえてきて、そちらへと視線を向けると、ロンが目を覚ましたようだ。
ベッドから起き上がりながら、頭をかいて周りをキョロキョロと見回している。
「僕、どうしちゃったんだろう?」