第14章 秘密【アズカバンの囚人】
「まったく、全員を起こすつもりなんですかね!いったい何のつもりでしょう?」
誰がこんな怒声を上げているのだろう。
そう思いながら耳を済ませると、声の主達がこちら側に近づいてくるのがわかった。
「きっと『姿くらまし』を使ったのだろう、セブルス。誰か一緒に部屋に残しておくべきだった。こんなことが漏れたら……」
「ヤツは断じて『姿くらまし』をしたのではない!この城の中では『姿くらまし』も『姿現し』もできないのだ!これは断じて、何か、ポッターが絡んでいる!」
セブの怒声が響いてくる。
どうやらシリウスが居なくなったことに気がついて、それにハリーが関わっていると思っているのだろう。
正しくその通りなのだけれど。
「セブルス、落ち着け。ハリーは閉じ込められている」
すると、勢いよく病室の扉が開いた。
魔法大臣にダンブルドアとセブが飛び込むように入ってきたが、ダンブルドアだけ涼し気な表情。
むしろ何か楽しんでいるような表情だ。
だけど、セブと魔法大臣だけは違う。
魔法大臣は怒っている様子だし、セブは逆上している様子だ。
「白状しろ、ポッター!いったい何をした!?」
「スネイプ先生!場所をわきまえていただかないと!」
大声をあげるセブに、マダム・ポンフリーが金切声をあげて怒る。
「スネイプ、まあ、無茶を言うな。ドアには鍵が掛かっていた。いま見た通り」
「こいつらがヤツの逃亡に手を貸した。わかっているぞ!」
セブは私とハリーとハーマイオニーに指を差す。
顔は怒りに歪んでいて、今までに見たことの無い表情なので、流石に驚いてしまう。
「いい加減静まらんか!辻褄の合わんことを!」
「閣下はポッターをご存知ない!こいつがやったんだ、わかっている。こいつがやったんだ!」
「もう充分じゃろう、セブルス」
怒りを現にするセブを、ダンブルドアが宥めるかのように言葉をかけた。
「自分が何を言っているのか、考えてみるがよい。わしが10分前にこの部屋を出た時から、このドアにはずっと鍵が掛かっていたのじゃ。マダム・ポンフリー、この子達はベッドを離れたかね?」
「もちろん、離れられせんわ!校長先生が出てらしてから、わたしくし、ずっとこの子達と一緒におりました!」