第14章 秘密【アズカバンの囚人】
ハーマイオニーが時計を確かめてから、悲鳴に近い声をあげた。
「あと3分よ、ハリー、アリアネ!」
ピーブズのご満悦な声が消えるのを待ってから、私たちは部屋を抜け出した。
そして全速力で病棟へと急ぐ。
「ハーマイオニー、ダンブルドアが鍵をかける前に、もし病室に戻らなかったら、どうするんだい?」
「考えたくもないわ!」
「とりあえず急がないと!あと何分!?ハーマイオニー!」
「あと1分!」
やっと、病棟に続く廊下の端に辿り着いた。
その時の安堵はどれだけのものだろうかと、私は胸を撫でながら走る。
「オッケーよ、ダンブルドアの声が聞こえるわ。ハリー、アリアネ、早く!」
するとドアが開いて、ダンブルドアの後ろ姿が見えた。
「君たちを閉じ込めておこう。今は真夜中5分前じゃ。Ms.グレンジャー、3回ひっくり返せばよいじゃろう。幸運を祈る」
ダンブルドアが後ろ向きで部屋を出てきて、ドアを閉めて杖で鍵をかけようとした。
それを見て慌てて私たちが飛び出すと、ダンブルドアは顔を上げてにっこりと微笑む。
「さて?」
「やりました!シリウスは行ってしまいました。バックビークに乗って……」
ダンブルドアはハリーの言葉を聞くと、更ににっこりと微笑んだ。
「ようやった。さてと」
そう呟くとダンブルドアは部屋の中の音に耳を澄ませる。
「よかろう。3人とも出ていったようじゃ。中にお入り、わしが鍵をかけよう」
飛び込むように私たちは病室に入る。
ロンは相変わらず、動きもせずに横たわっていた。
そして背後ではガチャッと鍵が閉まる音が聞こえて、同時に事務所からマダム・ポンフリーが出てきた。
「校長先生がお帰りになったような音がしましたけど?これで、わたくしの患者さんの面倒を見させていただけるんでしょうね?」
マダム・ポンフリーはとてもご機嫌ななめで、私たちにチョコレートを差し出した。
そして私たちが食べるのを確かめてから、またチョコレートを差し出す。
(こんなにチョコレート食べてたら太りそう……)
なんて思いながら、4個目のチョコレートを差し出された時だった。
遠くから怒り狂う声が聞こえてきたのである。
「何かしら?」
怒声は徐々に大きくなってきて、こちら側に近づいてくる。
その事にマダム・ポンフリーは眉を寄せた。