第14章 秘密【アズカバンの囚人】
シリウスはバックビークの脇腹を踵で小突く。
すると巨大な両翼の翼が広げられて、ばさりと風を生み出したのを見てから、私たちは飛び退いた。
バックビークは飛び立ち、シリウスと共に姿がだんだんと小さくなっていく。
それをじっと、私達は塔の上で彼らを見送る。
月に雲がかかり見えなくなるまで……。
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「ハリー、アリアネ!」
突如、ハーマイオニーが私とハリーの袖を引っ張りながら叫んだ。
「どうしたのよ、ハーマイオニー」
「誰にも見つからずに病棟に戻るのに、10分きっかりしかないわ。ダンブルドアがドアに鍵を掛ける前に……」
「わかった。行こう」
「急ぎましょう」
背後の扉から滑り込んでから、石造りの螺旋階段を駆け下りていく。
そして階段を降りた所で人の声が聞こえて、慌てて3人で壁にピッタリと身を寄せて耳を澄ませる。
声の主は魔法大臣とセブのようだ。
「……ダンブルドアが四の五の言わぬよう願うのみで。『キス』は直ちに執行されるのでしょうな?」
「アクネアが吸魂鬼を連れてきたらすぐだ。このブラック事件は、始めから終わりまで、全く面目丸つぶれだった。魔法省がやつをついに捕まえた、と『日刊預言者新聞』に知らせてやるのが、私としてもどんなに待ち遠しいか……。スネイプ、新聞が君の記事をほしがると、私はそう思うがね……それに、あの青年と少女、ハリーとアリアネが正気に戻れば、『預言者新聞』に君がまさにどんな風に自分たちを助け出したか、話してくれることだろう……」
私たちは元から正気。
それにセブは助けたんじゃなくて、気を失っていて事な経緯ちゃんと知らないまま。
その事に歯噛みしながらも、2人が通り過ぎのを待つ。
2人が完全にいなくなったのを確かめてから、私たちは2人が向かった場所とは反対の場所へと走り出す。
階段を1つおりて、2つ下りて、廊下を走った時だった。
高笑いが聞こえてきたのである。
「ピーブズだ!」
「こんな時に!?」
「ここに入って!」
ハリーは私とハーマイオニーの腕を掴むと、誰もいない教室へと飛び込んだ。
間一髪、ピーブズは上機嫌に笑いながら廊下をプカプカと浮きながら行った。
「なんて嫌な奴。吸魂鬼がシリウスを処分するっていうんで、あんなに興奮してるのよ……」
「あの顔面、殴ってやりたいわ……」