第14章 秘密【アズカバンの囚人】
窓を強く叩けば、顔を俯かせていたシリウスが勢いよく顔を上げた。
そして私たちを見ると呆気にとられているように、口を開かせて目を見開かせてるいる。
だが弾かれたように、シリウスは椅子から立ち上がってから窓際に駆け寄ってきて開けようとする。
だけど鍵がかかっていた。
「さがって!」
ハーマイオニーが呼びかけると、杖を取りだして呪文を唱えた。
「アロホモラ!」
窓が自動的に開く。
「ど、どうやって?」
「シリウス、いいから乗って。時間がないの」
「ここから出ないと。吸魂鬼がやってきます。アクネアが呼びに行きました」
私はシリウスへと手を伸ばす。
「早く、シリウス!」
シリウスは窓際の両端に手をかけてから、私の手を取った。
そしてバックビークに片足を掛けてから私の後ろに乗った。
「よーし、バックビーク、上昇!塔の上まで行くぞ!」
バックビークはその力強い翼を羽ばたかせてから、西塔こてっぺんまで飛び上がった。
そしてバックビークは爪音を立てながらも、胸壁に囲まれた登頂に降り立ち、私とハリーとハーマイオニーは慌てて背中から飛び降りる。
「シリウス、もう行って。早く。みんなが、まもなくフリットウィック先生の事務所にやってくる。貴方が居ないことが分かってしまう」
「もう1人の子は、ロンはどうした?」
「大丈夫。まだ気を失ったままです。でも、マダム・ポンフリーが、治してくださるって言いました。早く、行って!」
私はある事に気がついて、慌ててローブのポケットからあるものを取り出した。
「シリウス!これを!」
「これは……鍵?」
「シリウス、貴方なら、フリート家の隠れ家を知っているわよね?」
「あ、ああ……知っている」
フリート家には隠れ家がある。
元の家はゴドリックの谷にあったけれど、それとは別に隠れ家があった。
リーマスに小さい頃に連れられて、その家を見に行ったことがある。
そして、私がシリウスに渡したのはその隠れ家の鍵。
隠れ家があるのは、人気のない田舎であり、隠れ家の裏には森がある。
「その隠れ家に逃げて」
「……ありがとう、アリアネ。なんも礼を言ったらいいのか──」
「行って!」
シリウスはバックビークを一回りさけてから、空の方に向けた。
「また会おう。ハリー、君はお父さんの子だ。アリアネはヘレンの、お母さんの子だ」