第14章 秘密【アズカバンの囚人】
ハリーは緩く首を振った。
でも、ダンブルドアじゃなければ一体誰があれだけの吸魂鬼を追い払ったのだろうか。
「僕、見たよ。でも……僕、きっと、思い込んだだけなんだ……混乱してたんだ……そのすぐあとで気を失ってしまったし……」
「誰だと思ったの?」
「僕……僕、父さんだと思った」
ハリーの言葉に、私とハーマイオニーはあんぐりと口を開けてしまった。
だって、ハリーのお父さんはもう12年も前に亡くなっているのだから。
「ハリーのお父さん……!?」
「でも、ハリー、貴方のお父様、あの……お亡くなりになったのよ?」
「分かってるよ」
「お父様の幽霊を見たってわけ?」
「分からない……ううん……実物があるみたいだった……」
眉を下げながら語るハリーに、私とハーマイオニーはお互い顔を見合せた。
幽霊だったら実物はないはずだから、でもハリーのお父さんは確かに12年前に亡くなっている。
「だったら──」
「たぶん、気のせいだ。だけど……僕の見た限りでは……父さんみたいだった……。僕、写真を持ってるんだ……」
「ハリー……」
「バカげてるって、わかってるよ」
本当にハリーのお父さんはいたのだろうか。
ゴーストとしていたのかもしれないが、ゴーストは魔法を使えるのだろうかと考え込む。
頭上の木がサラサラと音を鳴らす。
そしてついに1時間以上経った頃だった。
「出てきたわ!」
ハーマイオニーの言葉に立ち上がり、木の木陰から様子を見守る。
気の根元からは、リーマスとロン、ペティグリューが窮屈そうに出てきていた。
それからハーマイオニー、そして私とシリウスとハリーも出てきて、セブは不気味に手をぶら下げながらふよふよと浮いている。
全員が気の根元から出てきて、城へと向かって歩き始めた。
ちらりと空を見上げれば、雲が流れていて、もうそろそろ雲が割れて月が現れる。
「ハリー、アリアネ……」
リーマスが変身したら、ペティグリューを捕まえてやりたい。
そう思っていると、ハーマイオニーに声をかけられた。
「じっとしなきゃいけないのよ。誰かに見られてはいけないの。私たちにはどうにも出来ないことなんだから……」
「じゃ、またペティグリューを逃がしてやるだけなんだ……」
「暗闇で、どうやってネズミを探すっていうの?」