第14章 秘密【アズカバンの囚人】
「そしたら、アクネアもファッジも一緒に着いてきてたよ。賭けてもいいけど、ファッジは、シリウスをその場で殺せって、アクネアに指示したと思うよ」
「ダンブルドアだけなら、私達の助けになってくれたのに……。魔法大臣達がいなければ……」
はあ……と息を吐き出しながら、城へと戻っていく4人の姿を見送った。
暫くは誰もこの辺りにはいなかったが、数分もせずに誰かの足音が聞こえてくる。
「ルーピンが来た!」
「リーマス……」
リーマスは芝生を駆けると、折れた枝を拾って木の幹のコブを突く。
すると柳は暴れるのを辞めて、リーマスも木の根元の穴へと消えていってしまった。
「ルーピンが『マント』を拾ってくれてたらなぁ。そこに置きっぱなしになってるのに……」
「仕方ないわ。置きっぱなしにしちゃったのが悪いんだもの」
「そうだけどさ。あ!もし、いま僕が急いで走ってマントを取ってくれば、スネイプはマントを手に入れることが出来なくなるし、そうすれば──」
「ハリー、私達、姿を見られてはいけないのよ!」
「君、どうして我慢できるんだい?」
「ハリーは少し我慢を覚えてちょうだい、ハーマイオニーみたいに!」
「ここに立って、なるがままに任せて、何もしないで見てるだけの方がいいってことなのかい!?」
ハリーはそう叫ぶと言葉を続けた。
「僕、『マント』を取ってくる!」
「「ダメ!」」
私とハーマイオニーは慌ててハリーのローブを掴んでから引き戻した。
その瞬間、大きな歌声が聞こえてきて、そこにはハグリッドが城に向かいながら歩いている姿があった。
手には大きな瓶をぶらぶらとさせている。
間一髪だった。
「危なかった……もう少しでハグリッドに見られるところだったわ」
「どうなってたか、分かるでしょ?私達、人に見られてはいけないのよ!あ、ダメよ、バックビーク!」
「こら、バックビーク!」
バックビークはハグリッドの姿を見つけたせいなのか、彼の元に行こうとしたので、慌てて手綱を引っ張る。
しばらく暴れていたバックビークだが、ハグリッドが居なくなると暴れるのを辞めて悲しそうに項垂れた。
「ごめんなさいね、バックビーク。でもダメなのよ」
私はバックビークの首を撫でながら、そう呟いた。