第14章 秘密【アズカバンの囚人】
ハーマイオニーの言葉に私は頷いた。
事が起こるまではまだまだ時間はあるし、今下手に動けばバレてしまう。
私達は今、とても難しいことをしようとしているのだから緊張してしまう。
「移動しなくちゃ。『暴れ柳』が見えるところにいかないといけないよ。じゃないと、何が起こっているのか分からなくなるし」
「オッケー」
「おいで、バックビーク」
私が手網を掴んだ時、ハーマイオニーは慎重な声を出した。
「でも、ハリー、アリアネ、忘れないで……私達、誰にも見つからないようにしないといけないのよ」
「わかってるわ、ハーマイオニー」
「うん、分かってるよ」
暗闇が広がっていく木々を、私達は慎重に歩いた。
森の隅に沿って歩き、『柳』が垣間見える木立の影に隠れる。
「ロンが来た!」
「ハリー、シーッ!」
突然ハリーが叫ぶので、私とハーマイオニーはハリーに指に手を当てて静かにするように伝えた。
そして木立の影から覗けば、ロンが芝生を横切ってかけてくる姿があった。
「スキャバーズから離れろ、離れるんだ!スキャバーズこっちへおいで──」
そして私達も走ってきている。
自分たちの姿をこうしてみるのはやっぱり変な気分だ。
「今度はシリウスだ!」
ハリーが叫ぶと、柳の根元から大きな黒犬が姿を現した。
シリウスが変身している黒犬が、ハリーを転がしてロンを咥えている。
「ここから見てると、よけい酷く見えるよね?」
「そうね」
「アイタッ、見てよ、僕とアリアネ、今、木に殴られた。ハーマイオニーも殴られたよ。変てこな気分だ──」
「ハリー、ちょっとは静かにしてよ。魔法大臣達が近づいてきたらバレちゃうわよ」
静かにしないハリーに怒りながらも、『暴れ柳』が暴れているのを見つめる。
暫くすると『暴れ柳』はピタリと動かなくなった。
「クルックシャンクスがあそこで木のコブを押したんだわ」
「僕たちが入っていくよ……僕たち、入ったよ」
私達が姿を消すと、暴れ柳はまた動き始める。
そして数秒後に足音が聞こえ出したと思えば、ダンブルドア、アクネア、魔法大臣に委員会のメンバーが城へと戻って行くところを見かけた。
「私達が地下通路に降りたすぐあとだわ!あの時に、ダンブルドアが一緒に来てくれていたら……」