第14章 秘密【アズカバンの囚人】
ハーマイオニーが囁き、私達は動きを停止させる。
「みんなが音を聞きつけるかも」
その言葉と同時に、ハグリッドの小屋の裏口がバタンと音を鳴らして開いたのが聞こえた。
私達は音を立てずにじっとその場に立ち尽くしながら、様子を伺う。
静寂が広がる。
自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる気がした。
「どこじゃ?」
委員会の年寄りのメンバーの声が聞こえた。
「ここに繋がれていたんだ!俺は見たんだ!ここだった!」
アクネアの怒り狂った声が聞こえてきた。
だが直ぐにダンブルドアの面白がっている声も聞こえてくる。
「これは異なこと」
「ビーキー!」
ハグリッドが声を詰まらせている。
するとシュッという音と共に斧を振り落とす音も聞こえてきた。
アクネアが斧を柵に振り落としたらしい音と共に、吠えるような声。
見つかれば直ぐに殺されてしまいそう。
そう思っていれば、ハグリッドのすすり泣きが聞こえてきた。
「いない!いない!よかっま。かわいい嘴のビーキー、居なくなっちまった!きっと自分で自由になったんだ!ビーキー、賢いビーキー!」
名前を呼ばれたせいなのか、バックビークはハグリッドの元に行こうとした。
「ダメよ、バックビーク……!」
私達は綱を握り直してから、踵が土にめり込むほど踏ん張ってバックビークを押さえる。
「誰かが綱を解いて逃がした!探さなければ。校庭や森──」
「アクネア、バックビークが盗まれたのなら、盗人はバックビークを歩かせて連れていくと思うかね?どうせなら、空を探すがよい……ハグリッド、お茶を1杯いただこうかの。ブランディをたっぷりでよいの」
相変わらず、ダンブルドアは面白そうに声をはずませている。
「は、はい、先生さま。お入りくだせえ、さあ……」
アクネアの悪態を吐く声が聞こえたのと同時に、戸が閉まる音が聞こえた。
それからはまた静寂が包む。
「小屋に入ったわね、全員」
「さあ、どうする?」
「ここに隠れていなきゃ。みんなが城に戻るまで待たないといけないわ。それから、バックビークに乗ってシリウスのいる部屋の窓まで飛んでいっても安全だ、というまで待つの。シリウスは後2時間ぐらいしないとそこにはいないのよ……ああ、とても難しいことだわ……」