第14章 秘密【アズカバンの囚人】
3時間前に何かを変えて欲しくて……。
いったいダンブルドアは何を変えてほしくて、私たちに3時間前に行くように仕向けたのだろうか。
「何が起こったかな?僕たち3時間前に、ハグリッドの所へ向かっていた……」
「今が、その3時間前よ。私たち、確かにハグリッドの所に向かっているわ。たったいま、私たちがここを出ていく音を聞いた……」
「ダンブルドアが言った……僕たち、1つといわずもっと、罪なき命を救うことができるって……」
「罪なき命……」
そこで私はある事を思い出した。
罪なき命がいま、奪われようとしていることに。
「バックビークだわ!」
「その通りだよアリアネ!ハーマイオニー、僕たち、バックビークを救うんだ!」
「でも、それがどうしてシリウスを救うことになるの?」
キョトンとハーマイオニーは首を傾げた。
そんな彼女にハリーが説明を始める。
「ダンブルドアが、窓がどこにあるか、今教えたくれたばかりだ。フリットウィック先生の事務所の窓だ!そこにシリウスが閉じ込められている!僕たち、バックビークに乗って、その窓まで飛んでいき、シリウスを救い出すんだよ!シリウスはバックビークに乗って逃げられる。バックビークと一緒に逃げられるんだ!」
「そんなこと、誰にも見られずにやり遂げたら、奇跡だわ!」
「でも、やってみなきゃ。そうだろう?」
「やってみなきゃ分からないわ、ハーマイオニー。とにかく、今からバックビークを助けださないと」
私とハリーは立ち上がってから、戸に耳を押し付けた。
何も足音やら話し声は聞こえてこないのを確認してから、ハリーとお互いの顔を見合せてから頷く。
「外には誰もいないみたいだ……さあ、行こう……」
ハリーがゆっくりと、警戒しながら戸を押し開けた。
玄関ホールには誰もいなくて、私たちだけであり、なるべく静かに急いで箒置き場を3人で出る。
石段をおりてから、玄関ホールを飛び出しだしてから走り出した。
「誰かが窓から覗いていたら……」
「全速力で走ろう。真っ直ぐ森に入るんだ。いいね?木の影かなんかに隠れて、様子を窺うんだ」
「いいわ。でも温室を回り込んで行きましょう!」
「温室?」
「ハグリッドの小屋の戸口から見えないようにしなきゃ。じゃないと、私たち、自分たちに見られてしまう!ハグリッドの小屋に私たちがもう着くころだわ!」