第14章 秘密【アズカバンの囚人】
ハーマイオニーは私たちに口を塞がすと、箒置き場の戸に耳を押し付けて外の音を探っている。
「玄関ホールを横切る足音だわ……そう、たぶん、私たちがハグリッドの小屋に行くところよ!」
「つまり、僕たちがこの中にいて、しかも外にも僕たちがいるってこと?」
「そうよ。絶対私たちだわ……あの足音は多くても4人だもの……それに、私たち『透明マント』をかぶってるから、ゆっくり歩いているし──」
まさか、本当に私たちが外にいるなんて。
そう思いながら私も戸に耳を当てて、外の音を聞けば確かに足音が聞こえてきた。
ゆっくりと歩いている足音であり、4人分のものだ。
「私たち、正面の石段を下りたわ……」
ハーマイオニーはひっくり返したバケツに腰掛けてから、どこか緊張した面持ち。
私とハリーは顔を見合せてから、ハーマイオニーが首にかけている砂時計を見た。
「その砂時計なみたいなもの、どこで手に入れたの?」
「さっき、それを3回ひっくり返してたけれど……」
「これ、『逆転時計(タイムターナー)』っていうの」
「『逆転時計(タイムターナー)』……」
「これ、今学期、学校に戻ってきた日に、マクゴナガル先生にいただいたの。授業を全部受けるのに、今学期、ずっとこれを使っていたわ。誰も言わないって、マクゴナガル先生と固く約束したの」
ハーマイオニーは目を細めながら、砂時計を眺める。
「先生は魔法省にありとあらゆる手紙を書いて、私に1個入手してくださったの。私が模範生だから、勉強以外には絶対こへを使いませんって、先生は魔法省に、そう言わなければならなかったわ……。私、これを逆転させて、時間を戻してたのよ。だから同時にいくつもの授業を受けられたの。わかった?でも……」
まさか、ハーマイオニーがそんなことをしていたなんて。
そう思いながら私は『逆転時計(タイムターナー)』へと視線を向ける。
「ハリー、アリアネ、ダンブルドアが私たちに何をさせたいのか、私、分からないわ。どうして3時間戻せてっておっしゃたのかしら?それがどうしてシリウスを救うことになるのかしら?」
「それもそうね……3時間前になにがあるっていうのかしら」
「ダンブルドアが変えたいと思っている何かが、この時間帯に起こったに違いない」