第14章 秘密【アズカバンの囚人】
ダンブルドアはコソコソと、だがはっきりとした口調で私たちに言葉をくれた。
「Ms.グレンジャー、規則は知っておろうな。どんな危険を冒すのか、君は知っておろう……誰にも、見られてはならんぞ」
何を言っているのかさっぱり分からなかった。
だけど多分、おそらくハーマイオニーにはわかる言葉なのだろう。
ハーマイオニーは目を輝かせていたから。
ダンブルドアは踵を返すと、ドアの方へと向かってこちらへと振り返った。
「君たちを閉じ込めておこう。今は真夜中5分前じゃ。Ms.グレンジャー、3回ひっくり返せばよいじゃろう。幸運を祈る」
「幸運を祈る?」
ダンブルドアは静かにドアを閉めた。
「3回ひっくり返すって、何?どういうことなの?」
「3回ひっくり返す?いったいなんの事だい?僕たちに、何をしろって言うんだい?」
私とハリーは訳が分からず、ハーマイオニーの方へと視線を向けた。
しかし、ハーマイオニーは私たちの言葉は聞いておらず、ローブの中から長くて細い金色の鎖を引っ張り出している。
「ハリー、アリアネ、こっちに来て」
「え?」
「早く!」
さっぱり分からないままだが、私とハリーはハーマイオニーの元に駆け寄る。
ハーマイオニーは鎖を突き出していて、その先には砂時計があった。
「さあ」
ハーマイオニーは私とハリーに鎖をかけた。
「いいわね?」
「僕たち、何をしてるんだい?」
「これからどうするの?」
ハーマイオニーは答えずに、砂時計を3回ひっくり返した。
すると暗い病室が溶けるように消えて、視界が歪むのがわかる。
やがて、固い地面に足が着くのを感じた。
辺りを見れば誰もいない玄関ホールに何故かいて、外は太陽が見えている。
さっきまでは確かに病室にいて、外も暗かったはずなのに。
「なに、どういうことなの……!?」
「ハーマイオニー、これは?」
「こっちへ!」
ハーマイオニーは私とハリーの腕を掴んでから、玄関ホールを横切り、箒置き場へと押し込めた。
そして自分も入ると扉を閉めてしまう。
「ハーマイオニー?これ、どういうことなの?」
「時間を逆戻りさせたの。3時間前まで」
「逆戻り……!?」
「でも──」
「シッ!聞いて!誰か来るわ!たぶん、多分私たちよ!」