第14章 秘密【アズカバンの囚人】
「そうです、リーマスがいます」
私とハリーは思わず口を挟んでしまった。
だが私たちじゃ納得してくれなければ、大人であるリーマスなら話を納得して聞いてくれるのではないかも思ったのだ。
「ルーピン先生は今は森の奥にいて、誰も何も話すことが出来ん。再び人に戻るころにはもう遅すぎるじゃろう。シリウスは死よりも惨い状態になっておろう。さらに言うておくが、狼人間は、我々の仲間うちでは信用されておらんからの。狼人間が支持きたところでほとんど役には立たんじゃろう。それに、ルーピンとシリウスは旧知の仲でもある──」
「でも──」
「よくお聞き、ハリー。もう遅すぎる。わかるかの?スネイプ先生の語る真相のほうが、君達の話より説得力があるということを知らねばならん」
子供の話は誰も聞いてくれない。
この時ばかり、自分が子供であることを憎んだ。
「スネイプはシリウスを憎んでいます。シリウスが自分にバカな悪戯を仕掛けたというだけで──」
「シリウスも無実の人間らしい振る舞いをしなかった。『太った婦人』を襲った。グリフィンドールにナイフを持って押し入った。生きていても死んでいても、とにかくペティグリューがいなければ、シリウスに対する判決を覆すのは無理というものじゃ」
「でも、ダンブルドア先生は、僕たちを信じてくださってます」
「そのとおりじゃ。しかし、わしは、他の人間に真実を悟らせる力はないし、魔法大臣こ判決を覆すことも
……」
急に目の前が真っ暗になった気がした。
ダンブルドアなら、きっとなんとかしてくれると思っていたから。
ダンブルドアならなんとかしてくれるという考えに慣れてしまっていた。
最後の望みだった。
ダンブルドアならシリウスが無実であることを、証明してくれると思っていたから。
その最後の望みが消えたかと思えた。
「必要なのは」
するとダンブルドアは明るく言葉を投げかけてきた。
「時間じゃ」
「でも」
ハーマイオニーが何かを言いかけたが、何かを思いついたかのように目を見開かせた。
「あっ!」
「さあ、よく聞くのじゃ。シリウスは、8階のフリットウィック先生の事務所に閉じ込められておる。西塔こ右から13番目の窓じゃ。首尾よく運べば、今夜、1つといわずもっと、罪なき者の命を救うことができるじゃろう。だし、3人とも、忘れるでないぞ。見られてはならん」