第2章 授業と決闘【賢者の石】
マルフォイはあっという間に樫の木の梢と同じ高さまで上がり、ハリーへと叫ぶ。
「ここまで取りにこいよ。ポッター」
「ハリー、挑発に乗っちゃ駄目よ。って、ハリー!」
私が言う前に、ハリーは箒を手にしていた。
だけど次に彼に注意したのは私ではなく、ハーマイオニーであった。
「ダメ!フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ」
だけどハリーは彼女の言葉を無視した。
箒に跨るとあっという間に急上昇していて、飛んでいるマルフォイの目の前に浮かぶ。
私も喧嘩っ早いけれど、ハリーもそうかもしれない。
ため息を吐きながら私は右手で自身の顔を覆うと、またため息を吐き出す。
「駄目って言ったのに·····」
辺では女子たちのキャーキャーという黄色い声と、男子たちの歓声。
フーチ先生、早く戻ってこないかしらと思いながら空を見上げた。
「アリアネ!もう、あの二人どうにかならないの?」
「どうにかなるかしら·····。もう、最悪·····フーチ先生を呼ぶか他の先生を呼ぶしかないわね。でも、不思議ね」
「何が、不思議なの?」
「ハリーはマグルで生活していたのに、まるで箒に乗ったことがあるみたいだわ。マルフォイより上手く、乗りこなせているもの」
空を見上げながら首を傾げる。
ハリーはマグルで生活していたはずなのに、あのマルフォイより上手に箒を乗りこなしていた。
槍のようにマルフォイにめがけて飛び出し、鋭く一回転したり。
「すごいや!見たか、アリアネ!ハリーすごいよ!」
「ええ、そうね。すごいけれど·····そろそろ誰か止めた方がいいわ。怪我する前に。ハリー!降りてきて!マルフォイも降りてきなさい!!怪我して無様な姿をお父様に見せることになるわよ!大して上手に箒を扱えていないのだから!」
「う、うるさい!フリート!!」
私の言葉に、マルフォイが顔を真っ赤にして叫ぶ。
そしてハリーに向き直るとマルフォイは突然、思い出し玉を空中高くに放り投げたのである。
「ネビルの思い出し玉が!」
するとハリーが前屈みになって急降下し始めた。
落ちていく思い出し玉へと手を伸ばして、そして思い出し玉を手にすると地面にぶつかる前に箒を引き上げて水平になったのである。
そんなハリーに『凄いわ』と言おうとした時であった。