第14章 秘密【アズカバンの囚人】
「エクスペクトパトローナム(守護霊よ来たれ)!」
そう唱えるとか細い銀色の光が見えた時だった。
私の意識がだんだんと霞んでいき、バタリとその場に倒れて意識が途切れた……。
ふと、意識が浮上する。
吐き気と目眩がしていて、目を開ければぐるぐると視界が回る。
気持ち悪い。
そう思いながら何回か瞬きをしていれば、声が聞こえたきた。
「言語道断……あろうことか……誰も死ななかったのは
奇跡だ……こんなことは前代未聞……いや、まったく、スネイプ、君が居合わせたのは幸運だった」
「恐れ入ります、大臣閣下」
「マーリン勲章、勲二等、いや。もし私が口やかましく言えば、勲一等ものだ」
「まことにありがたいことです、閣下」
「ひどい切り傷があるねえ……ブラックの仕業、だろつな?」
「実は、ポッター、フリート、ウィーズリー、グレンジャーの仕業です、閣下……」
話し声の主は、セブと恐らく魔法大臣のものだ。
私は目をもう一度閉じてから、2人の話し声に耳を傾ける。
「ブラックが4人に魔法をかけたのです。吾輩にはすぐに分かりました。4人の行動から察しますに、『錯乱の呪文』でしょうな。4人はブラックが無実である可能性があると考えていたようです。4人の行動に責任はありません。しかしながら、4人が余計なことをした為、ブラックを取り逃したかもしれない訳でありまして……」
セブの言葉に眉間に皺が寄る。
ふと、もう一度目を開ければ傍で眠っているハーマイオニーが見えた。
彼女は目を覚ましていて、私と目が合うと唇に指を当てたので、私は小さく頷く。
「4人は明らかに、自分たちだけでブラックを捕まえようと思ったわけですな。この4人はこれでもいろいろも上手くやりおおせておりまして……どうも自分たちの力を過信している節があるようで……。それにもちろん、ポッターの場合、校長が特別扱いで、相当な自由を許してきましたし……」
「あた、それは、スネイプ……なにしろ、ハリー・ポッターだ……我々はみな、この子に関しては多少甘いところがある」
「しかし、それにしましても、あまりの特別扱いは本人のためにならぬのでは?吾輩、個人的には、他の生徒と同じように扱うように心がけております」
その言葉に私はまた眉間に皺を寄せた。