第14章 秘密【アズカバンの囚人】
皆、無言でひたすら校庭を歩いて城を目指している時だった。
雲が切れて、校庭が突如ほんのりと明るくなり上を見上げれば月明かりが降り注いでいる。
「あ……っ、リーマス!!」
満月の光だ。
私は思わず叫んでリーマスに駆け寄ろうとしたが、誰かに腕を掴まれて止められてしまう。
「ダメだ、アリアネ!」
シリウスが腕を掴んでいた。
そして私を自分の後ろにやると、片手をあげてハリーとハーマイオニーを制止させる。
リーマスは硬直している。
だが、手足は震えていて、今にも変身しそうだ。
「どうしましょう──ルーピン先生はあの薬を今夜飲んでないわ!危険よ!」
「逃げろ」
シリウスが低い声で唸るように呟いた。
「逃げろ!早く!私に任せて、逃げるんだ!」
その途端だった。
校庭に唸り声が響き渡り、リーマスの体がみるみると形を変えていく。
頭は長く伸びていき、体も伸びていき、背中が盛り上がった。
みるみると身体は毛に包まれて、手は丸まって鉤爪が生えていく。
「リーマス!」
「駄目よ、アリアネ!近づいちゃ!」
リーマスへと手を伸ばしたいが、ハーマイオニーに止められた。
危険なのはわかっているけれど、このままではリーマスはハリー達を襲ってしまう。
そう思っている時だった。
いつの間にかシリウスの姿はなく、そこには大きな黒犬の姿があった。
シリウスが犬の姿に変身したのである。
「うわあああ!」
ロンが叫び声をあげる。
その途端、シリウスがリーマスの首に噛み付いてロンとペティグリューから引き離した。
シリウスとリーマスはお互いに噛み付き、鉤爪は互いを引き裂いている。
あちこちから血が溢れて、鉄錆の臭いがしてきた。
「ハリー、アリアネ!!」
シリウスとリーマスの戦いに唖然としている時、ハーマイオニーの悲鳴が聞こえた。
振り返ればペティグリューがリーマスの落とした杖に飛びついていて、ロンが転倒する。
「ペティグリュー!」
杖をペティグリューに向けた瞬間、破裂音が響いた。
ロンは倒れたまま動かくなり、クルックシャンクスが宙を舞ってボトリと地面に落ちる。
「エクスペリアームス(武器よ去れ)!」
ハリーがペティグリューに呪文を叫ぶと、リーマスの杖が空中を舞った。