第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「お前はジェームズとリリー、そしてウィリアスとヘレンをヴォルデモートに売った。否定するのか?」
シリウスの言葉に、ペティグリューはわっと泣き出した。
「シリウス、シリウス、私に何が出来たというのだ?闇の帝王は……君にはわかるまい……あの方には君の想像もつかないような武器がある……私は怖かった。シリウス、私は君や、リーマス、ジェームズにウィリアスのよつに勇敢ではなかった。私はやろうと思ってやったのではない……あの『名前を言ってはいけないあの人』が無理矢理──」
「嘘をつくな!」
吠えるように、シリウスが大声を出した。
「お前は、ジェームズとリリーとウィリアスとヘレンが死ぬ1年も前から、『あの人』に密通していた!お前がスパイだった!」
「あの方は──あの方は、あらゆるところを征服していた!あの方を拒んで、な、何が得られたろう?」
「史上でもっとも邪悪な魔法使いに抗って、何が得られたかって?それは罪もない人々の命だ、ピーター!」
「君には分かってないんだ!シリウス、私は殺されかねなかったんだ!」
「それなら、死ねばよかったんだ!友を裏切るくらいなら死ぬべきだった。我々も君のためにそうしただろう!」
シリウスは吠えるように叫んだ。
そしてシリウスはリーマスと肩を並べてから、杖を振り上げる。
「お前は気づくべきだったな」
リーマスは静かな声で囁いた。
「ヴォルデモートがお前を殺さなければ、我々が殺すと。ピーター、さらばだ」
2人が杖を握った時だった。
「やめて!」
「2人とも駄目よ!!」
ハリーとアリアネは叫んでから、2人を制止させた。
ハリーはペティグリューの前に立ち塞がり、アリアネはリーマスとシリウスの腕を掴んでいた。
「殺しては駄目だ」
「リーマスも、シリウスも駄目。ピーターを殺しちゃ、駄目よ……」
2人の行動に、リーマスとシリウスはショックを受けた表情を浮かべる。
「ハリー、アリアネ、このクズのらせいで、君達は両親を亡くしたんだぞ。このへこへこしているろくでなしは、あの時、君たちが死んでいたら、それを平然と眺めていたはずだ。聞いただろう。小汚い自分の命の方が、君たちの家族全員の命より大事だったんだ」
「分かってる」
「それでも、殺しちゃ駄目。杖を下に下ろして……」