第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
ロンは思いっきり不愉快そうに顔を歪めた。
「優しい子だ……情深いご主人様……。殺さないでくれ……私は君のネズミだった……いいペットだった……」
「人間の時よりネズミのほうが様になるなんていうのは、ピーター、あまり自慢にならない」
シリウスが厳しく言う中で、ロンは痛みで顔を蒼白にさせながら折れた足をペティグリューから引き離した。
するとロンが助けてくれないと悟ったペティグリューは、次はハーマイオニーへと近づいて彼女のローブを掴む。
「優しいお嬢さん……賢いお嬢さん……あなたは、貴方ならそんなことをさせないでしょう……助けて……」
ハーマイオニーは不愉快そうに、そした怯えたように顔を歪めながらしがみつくペティグリューからローブを引っ張る。
ペティグリューはとめどなく震えながら、次は跪きながらアリアネとハリーへと近付く。
「ハリー……アリアネ。ハリー……君はお父さんに生き写しだ。アリアネはお母さんに生き写し。そっくりだ……」
「ハリーとアリアネに話しかけるとは、どういう神経だ?ハリーとアリアネに顔向けが出来るか?この子達の前で、ジェームズとヘレンのことを話すなんて、どの面下げてできるんだ!?」
シリウスが怒りが滲んだ声で叫ぶ。
するとペティグリューは『ひっ!』と声を上げてから、アリアネのローブに縋り付いた。
「ハリー、アリアネ。ジェームズとヘレンなら、私が殺されることを望まなかっただろう……ジェームズとヘレンなら分かってくれたよ、ハリー、アリアネ、ジェームズとヘレンなら私に情けをかけてくれただろう……」
プチンとアリアネの中で何かがキレた。
両親を裏切っておいて、見殺しにしておいて、情けをかけてくれたと言ったり、名前を口にしたりとしたペティグリューに対して怒りを覚えたのだ。
「ふざけないで!私とハリーの両親を裏切り、見殺しにしておいて情けをかけてもらえると思わないで!」
アリアネは勢いよく足を振り、ペティグリューの事を蹴りつけた。
「ハリーと私に近付かないで!」
蹴られたペティグリューは涙を流しながら、またアリアネのローブを掴もうとしたが、それをシリウスとリーマスが近付き肩を掴んで止めた。
そしてペティグリューを床の上に仰向けに叩きつける。