第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
『信じてくれ』というその言葉にアリアネは無言で頷き、隣にいたハリーもまた頷いていた。
シリウスの言葉は信用出来る、彼は両親を裏切っていないと分かったからだ。
「信じる……貴方のこと、シリウスのことを……」
「……ありがとう、アリアネ」
「だめだ!」
ペティグリューが途端に叫んだ。
アリアネとハリーが頷いた事は、ペティグリューにとっては死刑宣告をされたのも当然。
するとペティグリューは床に膝をつきながら、シリウスへと這い蹲るように近付く。
祈るように手を握り合わせながら。
「シリウス、私だ、ピーターだ……君の友達の……まさか君は……」
シリウスは顔を顰めてから、蹴り飛ばそうと足を振ったが、ペティグリューは後ずさり蹴られることはなかった。
「私のローブは十分に汚れてしまった。この上お前の手で汚されたくはない」
「リーマス!」
ペティグリューはリーマスの方を向くと、彼の足元に這い蹲りながら金切声をあげる。
「君は信じないだろうね……計画を変更したなら、シリウスは君に話したはずだろう?」
「ピーター、私がスパイだと思ったら話さなかっただろうな。シリウス、たぶんそれで私に話してくれなかったのだろう?」
「すまない、リーマス」
「気にするな。我が友、パッドフット。その代わり、私が君をスパイだと思い違いをしたことを許してくれるか?」
「もちろんだとも」
シリウスはふっ……と笑みを浮かべた。
優しく光のある笑みにアリアネは何処か懐かしさを覚える。
(そうだこの笑顔……夢で見たわ。夢の中で出てきたシリウスが、こんな笑顔を浮かべていたのよ)
懐かしく優しい笑顔にアリアネの胸が熱くなる。
この熱さはなんだろうか……そう思いながらアリアネは笑みを浮かべているシリウスへと視線を逸らすことが出来なくなっていた。
シリウスは笑みをふと消すと、ローブの袖をまくっていた。
そしてリーマスも同時に袖まくりをしている。
「一緒にこいつを殺るか?」
「ああ、そうよう」
「やめてくれ……やめて……」
ペティグリューはか細い声で呟きながら、ロンの方へと転がり込んだ。
「ロン……私はいい友達……いいペットだったろう?私を殺さないでくれ、ロン。お願いだ……君は私の味方だろう?」
「自分のベッドにお前を寝かせていたなんて!」