第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
言葉を零しながら、シリウスはペティグリューから目を一時も離さなかった。
逃がさないと言わんばかりに。
「だからこそ、私は何かをせねばならなかむた。ピーターがまだ生きていると知っているのは私だけだ……。まるで誰かが私の心に火を点けたようだった。しかも吸魂鬼はその思いを砕くとこはできない……幸福な気持ちではないからだ……妄執だった……しなし、その気持ちが私に力を与えた。心がしっかり覚めた。そこである晩、連中が食べ物を運んできて独房の戸を開けた時、私は犬になって連中の脇をすり抜けた……」
シリウスは思い出しながら、語った。
その目は暗く、先程までの怒りが消え去ってはいないけれど暗くて感情が見えにくい。
「連中にとって獣の感情を感じるのは非常に難しいことなので、混乱した……私は痩せ細っていた。とても……鉄格子の隙間をすり抜けれるほど痩せていた……私は犬の姿で泳ぎ、島から戻ってきた……北へと旅し、ダイアゴン横丁でアリアネに出会った」
「……あの時の黒犬は、あなただったのね」
「ああ。その後はホグワーツの校庭に犬の姿で入り込んだ……それからずっと森に棲んでいた……その後はアリアネにまた会って食べ物を貰ったな。あの時は助かった、腹が減っていたからね。ありがとう」
「……お礼を言われるような事はしてないわ」
「いや、君はとても優しい。そう……ヘレンによく似ている……」
アリアネは少しこそばゆい気持ちだった。
お礼を言われたことと、母に似ていると言われた事にこそばゆさと嬉しさが込み上げてくる。
「2度だけ、クィディッチの試合を見に行ったが。ハリー、君はお父さんに負けないぐらい飛ぶのが上手い……。アリアネは好奇心がウィリアスよりあるんだろうね。私に着いてこようとした」
「あ……あれは……」
あの時はまるで犬が来いと言っているかのようであって、着いていこうとしただけだ。
シリウスは困ったように微笑んでいて、その微笑みにアリアネの胸が熱くなる。
(あれ……なんで胸が熱いんだろう……)
するとシリウスはハリーとアリアネを真っ直ぐに見た。
「信じてくれ。信じてくれ、ハリー、アリアネ。私は決してジェームズやリリー、ウィリアスとヘレンを裏切ったことはない。裏切るくらいなら私が死ぬほうがましだ」