第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
シリウスは歯噛みしながらゆったりとした口調で語った。
「お前のような弱虫の、脳なしを利用しようとは夢にも思わないだろう。……ヴォルデモートにポッター一家とフリート一家を売った時、さぞかし、お前は惨めな生涯の最高の瞬間だったろうな」
シリウスの言葉に、ペティグリューは小さな声で何かを喚いていた。
その声はハッキリとは聞き取れなかったが、『気が狂っている』と言っているのは聞こえてくる。
そしてペティグリューは相変わらず窓やドアの方向を気にしているのをアリアネは気がついていた。
すると、ハーマイオニーが恐る恐るとリーマスに声をかけた。
「ルーピン先生。あの、聞いても良いですか?」
「どうぞ、ハーマイオニー」
「あの、スキャバーズ……いえ、この人、ハリーの寮で3年間同じ寝室にいたんです。それにアリアネとは10何年間も一緒にいたんです。『例のあの人』の手先なら、今までハリーとアリアネを傷つけなかったのは、どうしてかしら?」
「そうだ!」
ペティグリューは喜んだようにハーマイオニーを指さして、甲高い声で喚く。
「ありがとう!リーマス、聞いたかい?ハリーとアリアネの髪の毛一本傷つけてはいない!そんなことをする理由があるかい?」
「その理由を教えてやろう」
シリウスが低い声で呟いた。
「お前は、自分のために得になることがなければ、誰の為にも何もしないやつだ。ヴォルデモートは12年も隠れた間まで、半死半生だと言われている。アルバス・ダンブルドアの目と鼻の先で、しかも全く力を失った残骸のような魔法使いのために、殺人などするお前か?『あの人』こ元に馳せ参じるなら、『あの人』がお山の大将で1番強いことを確かめてからにするつもりだったろう?そもそも魔法使いの家族に入り込んで飼ってもらったのは何のためだ?情報が聞ける状態にしておきたかったんだろう?え?おまえの昔の保護者が力を取り戻し、またその下に戻っても安全だという事態に備えて……」
シリウスの言葉に言い訳も出来ないのだろう。
ペティグリューは口をパクパクとさせて、声も出せない状態であった。
そしてシリウスが言葉を途切れさせた時、ハーマイオニーが声をかけた。
「あの、ブラックさん……シリウス?」
シリウスはハーマイオニーに声をかけられて飛び上がりそうなぐらいに驚いていた。