第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「ヴォルデモートはお前の情報でポッター家に行った……そこでヴォルデモートが破滅した。ところがヴォルデモートの仲間は、一網打尽でアズカバンに入れられた訳ではなかった。そうだな?まだその辺にたくさんいる。時を待っているのだ。悔い改めたふりをして……。ピーター、その連中が、もしお前がまだ生きていると風の便りに聞いたら──」
「何のことやら……何を話しているやら……」
シリウスから目を逸らしたペティグリューの声は更に甲高く、オドオドとしている。
袖で汗を拭う姿は、尋問されているようであり、追い詰められた犯人のようだ。
「リーマス、君は信じらないだろう。こんな馬鹿げた──」
「はっきり言って、ピーター、なぜ無実の者が、12年もネズミに身をやつして過ごしたいと思ったのか、理解に苦しむ」
リーマスの瞳は感情がなかった。
「無実だ。でも怖かった!ヴォルデモート支持者が私を追っているなら、それは、大物の1人を私がアズカバンに送ったからだ。スパイのシリウス・ブラックだ!」
「よくもそんなことを」
シリウスが低い声で唸る。
「私が?ヴォルデモートのスパイ?私がいつ、自分より強く、力のある者たちにへこへこした?しかし、ピーター、お前は、お前がスパイだということを、なぜ初めから見抜けなかったのか。迂闊だった。おまえはいつも、自分の面倒を見てくれる親分にくっついてるのが好きだった。そうだな?かつては我々だった……私とリーマス……それにジェームズとウィリアスだった……」
シリウスの言葉が響く度に、空気がピリついた。
その空気にアリアネは少し怯えながら、ハリーの腕を握りしめて息を飲んだ。
(怖い……空気がぴりついてる。ブラックが怒っているから?リーマスも何時もの彼じゃないみたいで怖い……)
そう思いながらアリアネはペティグリューを見た。
汗を吹き出しながら、挙動不審に瞳をキョロキョロと動かしている彼を。
「私が、スパイなんて……正気の沙汰じゃない……けっして……どうしてそんなことが言えるのか、私にはさっぱり──」
「ジェームズとリリーとウィリアスとヘレンは、私が勧めたからお前を『秘密の守人』にしたんだ。私はこれこそ完璧な計画だと思った……目眩した……ヴォルデモートはきっと私を追う」