第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
ペティグリューは突然叫ぶと、シリウスを指さす。
だが、彼の人差し指は無くて代わりに中指でシリウスを指さしていた。
「こいつはジェームズとリリー、ウィリアスとヘレンを殺した。今度は私も殺そうとしてるんだ。……リーマス助けておくれ……」
シリウスの表情が変わった。
怒り狂ったような、そんな表情であり、今にでもペティグリューを殺しそうだ。
「少し話の整理がつくまでは、誰も君を殺しはしない」
「整理?」
ペティグリューはキョロキョロとすると、中を確認するように見渡していた。
まるで逃げ場所を探しているように。
「こいつが私を追ってくると分かっていた!こいつが私を狙って戻ってくるとわかっていた!12年も、私はこの時を待っていた!」
「シリウスがアズカバンを脱獄すると分かっていたも言うのかね?いまだかつて脱獄した者は誰もいないのに?」
「こいつ、私達の誰もが、夢の中でしか叶わないような闇の力を持っている!それがなければ、どうやってあそこから出られる?おそらく『名前を言ってはいけないあの人』がこいつに何か術を教え込んだんだ!」
ペティグリューは甲高い声で叫ぶと、屋敷の中で笑い声が響いた。
その笑い声の主はシリウスであり、彼は低い唸るような笑い声を上げていた。
「ヴォルデモートが私に術を?」
シリウスがその名を口にすると、ペティグリューは縮みあげた。
「どうした?懐かしいご主人様の名前を聞いて怖気付いたか?無理もないな、ピーター。昔の仲間はお前のことをあまり快く思っていないようだ。違うか?」
「何のことやら……シリウス、君が何を言っているのやら──」
モゴモゴとペティグリューは口ごもる。
顔からは汗が吹き出していて、目は挙動不審に揺れていた。
「お前は12年もの間、私から逃げていたのではない。ヴォルデモートの昔の仲間から逃げ隠れしていたのだ。アズカバンで色々耳にしたぞ、ピーター。……みんなお前が死んだと思っている。さもなければ、お前はみんなから落とし前を付けさせられたはずだ。……私は囚人達が寝言で色々叫ぶの聞いてきた。どうや、みんな、裏切り者がまた寝返って自分達を裏切ったと思っているようだった」
シリウスの瞳は鋭かった。
鋭い瞳でペティグリューを睨みながら、淡々と言葉を続ける。