第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「シリウス、準備は?」
そう聞かなくとも、シリウスは既にスネイプの杖を拾い上げていて、スキャバーズに近づく。
潤んだいた瞳は憎しみや怒りで燃え上がっているようだった。
「一緒にするか?」
「そうしよう。3つ数えたらだ。いち、に、さん!」
青白い光がスキャバーズに当たる。
一瞬だけスキャバーズが宙に浮きが上がり静止したかと思え、ボトリと落ちる。
すると頭が床から上へと伸びて、手足が生えていき、瞬きをする間にそこには1人の男が立っていた。
そして、クルックシャンクスとジークが威嚇した声を上げた。
小柄な中太りした男だった。
背丈はハーマイオニーとアリアネとはそう変わらず、まばらな色あせた髪はクシャクシャであり、てっぺんには禿げがある。
「やあ、ピーター」
リーマスは親友に挨拶するかのように声をかけた。
「しばらくだったね」
「シ、シリウス……リ、リーマス……」
「本当に……スキャバーズがペティグリューだったのね……」
アリアネ、ハリー、ロンにハーマイオニーは唖然としていた。
まさか本当にスキャバーズがペティグリューだったとは思ってもいなかったのだから。
「友よ……なつかしの友よ……」
ペティグリューが、『友よ』と言葉を口にした瞬間、シリウスは怒りに染まった表情を浮かべて杖を持った腕を振り上げた。
だがリーマスが彼の手首を抑えて、窘めるように見つめる。
そしてさり気ない様子で、ペティグリューに声をかけた。
「ジェームズとリリー、そしてウィリアスとヘレンが死んだ夜、何が起こったのか、いまお喋りしていたんだがね、ピーター。君はあのベッドでキーキー喚いていたから、細かいところを聞き逃したかもしれないな」
「リーマス」
ペティグリューがか細く、小さな声であえぐ。
「君はブラックの言うことを信じたりしないだろうね。……あいつは私を殺そうとしたんだ、リーマス……」
「そう聞いていた」
リーマスの声と表情はとてつもなく冷たかった。
初めて見る名付け親のそんな表情にアリアネは驚いてしまい、隣にいたハリーの腕を掴む。
「ピーター、2つ、3つ、すっきりさせておきたいことがあるんだが、君がもし──」
「こいつは、また私を殺しにやってきた!」