第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
リーマスはハリーを宥めるように、小さな子供に言い聞かせるように話した。
「嘘だ!ブラックが『秘密の守人』だった!ブラック自身があなたが来る前にそう言ったんだ。こいつは、自分が僕とアリアネの両親を殺したと言ったんだ!」
ハリーはブラックを指差して叫び、ハリーの言葉にシリウスはゆっくりと首を振る。
落窪んでいる瞳は涙で潤んだたように光っていて、アリアネはその瞳に驚いた。
死んだような瞳だったのに、ハリーの言葉で泣きそうに潤んだのである。
「ハリー……私が殺したも同然だ」
「同然……?」
「最後の最後になって、ジェームズとリリーにピーターを守人にするように勧めたのは私だ。ピーターに代えるように勧めた」
「守人を変えていたの?」
「ああ、そうだよ。だから私が悪いのだ。確かに……4人が死んだ夜、私はピーターの所にいく手はずになっていた。ピーターが無事かどうか、確かめるに行く事にしていた。ところが、ピーターの隠れ家に行ってみると、もぬけの殻だ。しかも争った跡がない。どうもおかしち。私は不吉な予感がして、すぐに君とアリアネのご両親の所へ向かった」
シリウスは静かに語った。
その瞳は相変わらず潤んでいて、泣きそうな表情を浮かべている。
「そして、家が壊され、4人が死んでいるのを見た時、私は悟った。ピーターが何をしたのか。私が何をしてしまったのかを」
涙声になっていたシリウスにアリアネは目を見開かせた。
自分の両親を殺した人間が、こんなふうに悲しむのだろうか、もしかしたらこの人は両親を殺したのでは無いのかもしれない。
そんな風に思いながらシリウスを見つめた。
「話はもう十分だ」
リーマスが暗い表情をしながらそう呟いた。
「本当に何が起こったのか、証明する道は唯1つだ。ロン、そのネズミをよこしなさい」
「こいつを渡したら、何をしようというんだ?」
ロンは緊張した声で、スキャバーズをギュッと握りしめた。
リーマスを警戒しながらベッドの上で後退る。
「無理にでも正体を現させる。もし本当のネズミだったら、これで傷つくことはない」
ロンは一瞬躊躇ったが、リーマスへとスキャバーズを差し出し、それをリーマスは受け取ってから鋭い目付きでスキャバーズを睨みつける。