第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「私の出会った猫とフクロウの中で、こんなに賢い猫とフクロウはまたといない。ピーターを見るなり、すぐに正体を見抜いた。私と出会った時も、私が犬ではないことを見破った。私を信用するまでに暫くかかった」
「ジークとクルックシャンクスが……?」
「ああ。私の狙いをこの猫とフクロウに伝えることが出来て、それ以来わたしを助けてくれた」
「それ、どういうこと?」
クルックシャンクスとジークが、シリウスの手助けをしていた。
そのことに全員が混乱していたのである。
「ピーターを、私のところに連れてこようとした。しかし、出来なかった。……そこで私のためにグリフィンドール塔への合言葉を盗み出してくれた……誰かの男の子のベッド脇の小机から持ってきたらしい……」
すぐにそれがネビルの事だとアリアネは気が付いた。
まさか、クルックシャンクスとジークが合言葉の紙を盗み出していたなんて……。
そのことに驚きながらアリアネはジークとクルックシャンクスを交互に見た。
「しかし、ピーターはことの成り行きを察知して、逃げ出した。……この猫はクルックシャンクスという名だね?そしてフクロウはジーク。ピーターがベッドのシーツに血の痕を残していったと教えてくれた。……多分自分で自分を噛んだのだろう……そう、死んだと見せかけるのは、前にも一度うまくやったのだし」
「それじゃ、なぜピーターは自分が死んだと見せかけたんだ?お前が、僕とアリアネの両親を殺したと同じように、自分をも殺そうとしていると気づいたからじゃないか!」
「違う。ハリー」
「それで、今度はトドメを刺そうとしてやってきたんだろう!」
ハリーはシリウスに殺気が籠った瞳を向けた。
だがリーマスが、『違う』とハリーを宥めるかのように言い聞かせる。
だがシリウスは否定せずにハリーの言葉を肯定した。
「そのとおりだ」
「それなら、僕はスネイプにおまえを引き渡すべきだったんだ!」
「ハリー。わからないのか?私達はずっと、シリウスが君とアリアネのご両親を裏切ったと思っていた。ピーターがシリウスを追い詰めたと思っていた。しかし、それは逆だった。わからないかい?ピーターが君とアリアネのお父さん、お母さんを裏切ったんだ。シリウスがピーターを追い詰めんだ」