第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
リーマスは優しげに微笑んだが、ハリーは警戒心を見せながら反発を見せた。
「僕、まだ貴方を信じるとは言ってません」
反発するハリーにリーマスは苦笑を浮かべた。
半分傷付いた表情で、半分嬉しげな、そんな曖昧な表情を浮かべる。
「それでは、君達に証拠を見せる時が来たようだ」
シリウスはそう言葉にしながら、ロンを見る。
いや、ロンの手元にあるスキャバーズを睨み付けていた。
「君、ピーターを渡してくれ」
「冗談はやめてくれ。スキャバーズなんかに手を下すために、わざわざアズカバンを脱獄したって言うのかい?つまり……」
ロンはスキャバーズを抱き締めながら、アリアネとハリーとハーマイオニーに助けを求めるように視線を向ける。
「ねえ。ペティグリューがネズミに変身出来たとしても、ネズミなんて何百万といるじゃないか。アズカバンに閉じ込められていたら、どのネズミが自分の探しているネズミなんて、この人、どうやってわかるって言うんだい?」
「そうだとも、シリウス、まともな疑問だよ」
リーマスはシリウスに対して眉を寄せてから、そう言葉を投げかけた。
「あいつの居場所を、どうやって見つけ出したんだい?」
その言葉に返事するように、シリウスはローブに手を突っ込んでから、クシャクシャになっている紙切れを取り出した。
シリウスはその紙切れを綺麗に伸ばしてから、みんなに突き出して見せる。
シリウスが見せたのは、『日刊預言者新聞』の切れ端。
そこに載っているのはロンとウィーズリー家の家族写真であり、ロンの肩にはスキャバーズが乗っている。
「日刊預言者新聞……?これ、エジプトに行った時の写真じゃない……」
「いったいどうしてこれを?」
「ファッジだ。去年、アズカバンの視察に来た時、ファッジがくれた新聞だ。ピーターがそこにいた。一面に……この子の肩に乗って……私はすぐにわかった。……こいつが変身するのを何回見たと思う?それに、写真の説明には、この子がホグワーツに戻ると書いてあった……ハリーとアリアネのいるホグワーツへと……しかも、コイツは堂々とアリアネの傍にいた」
「何なることだ」
リーマスの視線はスキャバーズから新聞の写真へと向き、またスキャバーズへと向けられた。
そして小さく呟いた。
「こいつの前脚だ……」