第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「お生憎だな。しかしだ、このこがネズミを城で連れていくなら……それなら私は大人しく着いて行くがね」
シリウスは憎たらしそうにスネイプを睨みながら、ロンのことを顎で指した。
「城までかね?そんなに遠くに行く必要はないだろう。『柳』の木を出たらすぐに、吾輩が吸魂鬼を呼べばそれですむ。連中は、ブラック、君を見たらお喜びになることだろう。……喜びのあまりキスをする。そんなところだろう……」
アリアネはリーマスから聞いた話を思い出した。
シリウスが発見されたらすぐに、吸魂鬼からのキスという名の死刑よりも酷いものをされるという話を。
それを思い出しながら、必死に紐を解こうとしていたが、なかなか解けない。
「なんで、解けないのよ……ッ!」
そんなアリアネを視界に入れながら、ブラックが唸るように呟いた。
「聞け、最後まで、私の言うことを聞け。ネズミだ、ネズミを見るんだ」
だが、スネイプは話を聞かなかった。
「来い、全員だ」
スネイプが指を鳴らすと、リーマスを縛り付けていた縄目の端がスネイプの指へと伸びた。
「吾輩が人狼を引き摺っていこう。吸魂鬼がこいつにキスをしてくれるかもしれん」
「セブ!」
ハリーとアリアネは勢いよく飛び出すと、ドアの前に立ち塞がった。
「どけ、ポッター、アリアネ。お前達はもう十分規則を破っているんだぞ。吾輩がここに来てお前達の命を救っていなかったら──」
「ルーピン先生が僕とアリアネを殺す機会は、この1年に何百回もあったはずだ。僕とアリアネは先生と3人で何度も吸魂鬼防衛術の訓練を受けた。もし先生がブラックの手先だったら、そういう時に僕とアリアネを殺してしまわなかったのは何故なんだ?」
「それに私は幼い頃からリーマスと一緒だった。それなのに私は殺されることはなかったわ。逆に私の安全の為にとウィーズリー家に預けられたのよ」
「人狼がどんな考えた方をするか、吾輩に推し量れとでも言うのか」
「そんな言い方をしないで!」
アリアネは怒りで声を荒げた。
「アリアネ、君は名付け親だからといって人狼を庇っているのか。なんと哀れなで健気な……だが、人狼はブラックの手先だ」
「違うわ!」
「どけ、ポッター、アリアネ!」