第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「愚かな。学生時代の恨みで、無実の者をまたアズカバンに送り返すというのかね?」
その瞬間、弾けたような音が響いた。
スネイプの杖からは細い紐が蛇のように吹き出て、リーマスの口や手首と足首に巻きつく。
リーマスは体の自由を奪われてしまい、床に倒れて動けなくなってしまう。
「リーマス!」
「近づくでは無い、アリアネ。コヤツはブラックを手引きした者だぞ」
「違う!リーマスはそんなことしてないわ!」
「それはどうだろうね」
スネイプはリーマスの元に駆け寄ろうとしたアリアネの体を捕まえて、身動きが取れないようにした。
その時、シリウスは怒りの低い唸り声をあげて、スネイプを襲おうとしたが、スネイプがシリウスの眉間に真っ直ぐに杖を突きつける。
「やれるものならやるがいい。吾輩にきっかけさえくれれば、確実に仕留めてやる」
「離してセブ!」
「動くのではない!」
力強くスネイプはアリアネの腕を掴みながら、離そうとしない。
だが大人しく捕まっているアリアネではない。
「離してって言ってるでしょう!!」
ガブッとアリアネはスネイプの腕に噛み付いた。
噛まれたスネイプは痛みのあまりに顔を歪め、彼女の腕を離した。
そのすきにアリアネはリーマスの元に駆け寄り、縛られた彼の紐を取ろうとする。
「この……大人しくしていろと言うものを!」
スネイプが痛みで顔を歪めている時、ハーマイオニーがおずおずと声をかけた。
「スネイプ先生、あの、この人たちの言い分を聞いてあげても、害はないのでは、あ、ありませんか?」
「Ms.グレンジャー。君は停学処分を待つ身ですぞ」
痛みを堪えながら、スネイプは吐き出すように言う。
「君も、ポッターも、ウィーズリーもアリアネも、許容されている境界線を超えた。しかもお尋ね者の殺人鬼や人狼と一緒とは。君も一生に一度ぐらい、黙っていたまえ」
「でも、もし、もし誤解だったら」
「黙れ、このバカ娘!分かりもしないことに口を出すな!」
珍しくスネイプは狂ったように叫んだ。
怒りのせいなのか、スネイプの持っている杖の先からは火花が散っている。
「復讐は蜜より甘い。おまえを捕まえるのが吾輩であったらと、どんなに願ったことか……」