第2章 授業と決闘【賢者の石】
ボソリと呟いた私の言葉に、ハリーとロンが弾かれたように私へと視線を向けた。
「躾って、マルフォイは犬じゃないんだよアリアネ」
「あら、駄犬よ、駄犬。親が甘やかして躾てないからああなるのよ」
「アリアネ、貴方って見た目に反して喧嘩っ早いわよね。見た目は凄く大人しそうなのに」
ハーマイオニーの言葉に、ロンが深く頷いていた。
見た目はそんなに大人しそうなのかしらと、頬に手を当てながら首を傾げる。
「それよりも、午後からの飛行訓練、ちゃんとできるかしら。もう一回、飛行のコツをおさらいしましょう」
そのハーマイオニーの言葉に、その場に居たネビルと私以外の全員がげんなりとした。
それから、午後三時半に私たちは初めての飛行訓練を受けるために正面階段から校庭へと急ぐ。
よく晴れた青空が広がる空、そして少しの風。
飛行するにはいい日かもしれないと思いながら、校庭の芝生を踏み歩けば既にスリザリン生がいた。
「もういるのね、スリザリン生」
「みろよ、マルフォイの奴。すました顔してやがるし、なんか言ってる」
「自慢話をしてるんだろうね。それか、僕の話をしながら笑っているんだよ」
二十本の地面に並べられた箒。
それを見ながら、ふと、フレッドとジョージが教えてくれたことを思い出す。
「双子が言ってたわね。確か、高い所に行くと震え出す箒やどうしても左に行ってしまうくせのある箒があるって」
「僕もそれ、思い出してたよ。変なのに当たらなきゃいいけど·····」
「そうね·····普通の箒だといいわね」
ハリーと二人で不安になっていれば、白髪を短く切り揃えて鷹のような黄色の瞳をした女性が立つ。
マダム・フーチ先生だ。
「なにをボヤボヤしてるんですか。みんな箒のそばに立って。さあ、早く」
急かされ、私たちは箒の隣に立つ。
少し古ぼけて、小枝があちこち飛んでいる箒。
「右手を箒の上に突き出して。そして、『上がれ!』と言う」
その言葉を聞いた私たち、一斉に『上がれ!』と叫んだ。
「上がれ!」
すると箒はパシッと手の中に収まった。
成功したことを喜んで、隣にいるハリーを見れば彼の手の中にも箒が握られている。
「成功したわね、ハリー!」
「うん。上手くできたよ!」
二人で喜んでいたが、箒が上手く上がった生徒は少なかったみたいである。